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3びきのくま |
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三鷹の森ジブリ美術館で、5月19日から「3びきのくま~映画にできないとっておきのはなし《展が開催されています。
2008年5月までの予定。詳細はジブリのHPをご覧くださいね。
「3びきのくま《ほかヴァスネツォフを中心に、ロシア絵本も展示されています。
ちょうどいい機会なので、海ねこにある「3びきのくま《を少々ではありますが集めてみました。
一部、すでに海ねこHPで公開した本と重複しているものもあります。
各国で作られている「3びきのくま《絵本。
森の小屋に3びきのくまが暮らしていました。
こぐま、中くらいのくま、大きいくまの3びきです。
ある朝、朝食のおかゆがとても熱かったので、3びきのくまはおかゆが冷めるまで森を散歩することにしました。
3びきが出かけている間に、森の中で迷子になった女の子がくまの家に入り込みます。
女の子はおなかがすいていたので、3つの器からおかゆを一口ずつパクリ。
最後に口にした小さなおわんのおかゆがいちばん口に合ったので、
女の子はこぐまのおかゆを全部食べてしまいました。
次に女の子は隣の部屋にあった大きい椅子、中ぐらいの椅子、小さな椅子に座ってみます。
そして、ちょうどすわり心地がぴたりときたこぐまの椅子をこわしてしまいます。
そうしているうちに眠くなり、寝室にあった大きなベッド、中くらいのベッド、小さなベッドに横になり、
いちばん寝心地がよかったこぐまのベッドでスースー。そこに3匹が戻ってきて…。
おなじみのお話ですが、昔話を再話する場合、作り手によってお話も絵も実に多様です。
原作者が限定されない分、それだけ自由な解釈が可能なのですね。
日本語の絵本だけ見比べても、訳者によって解釈、訳文が大きく異なります。
絵柄も、くま、女の子、室内の様子、食器やイス、ベッド…、描き手によってバリエーション豊か。
できれば、何冊か見比べてみていただくと、その奥深い面白さを体感していただけると思います。
●品切れ こどものとも 「母の友《絵本66 3びきのくま
瀬田貞二・訳 山田三郎・絵
福音館書店 61年9月
3500円
C 表紙・裏表紙ヤケ・シミ・少シワ 本文シミ 一箇所ページどうし貼りつきあと 背イタミ 当時50円
今から45年以上前に出版されたもので、当時の版です。
なにしろ瀬田貞二(敬称略。以下同じ)の訳文が素晴らしい。
大きなくまは迫力いっぱい、めいっぱい怖く! 中くらいのくまはロシアのおかみさんふう(?)に、
そして、こぐまはかわいらしくと、3者の描き分けが鮮やかです。
こぐまは、あくまでもかわいく、ちょっと気の弱い感じ。たとえば、こんな感じ。
かわいい ちっちゃい くまは、
じぶんのところにも、どんぶりに さじが いれっぱなしで、
おかゆが すっかり なくなっているのを みて、
「だれかが、ぼくの おかゆを たべたよ。
そいで、すっかり、たべちゃったよ!《
と、かわいい ちっちゃい こえで いいました。
こぐまの哀しみ、がっかりした感じが伝わってくるようです。
女の子の吊前は「きんきらこ《(!)。その描き方が面白い。
きんきらこは、ひょこっと おきてーー3びきのくまが、いっしょに、ぬっと たっているのを みると、
べっどの はんたいがわへ とびおりて、まどの ほうへ かけだしました。
きんきらこは ぴょんと まどから とびだして、
すたこら さっさと、にげました。
あとも みずに、すたこら さっさ。
なんという豊かな日本語の音感。
裏表紙までしっかりめいっぱい使ってお話を展開しています。
山田三郎さんの絵は、ロシアの女の子は、いかにもロシアっぽく。
子どもは、いかにもかわいらしい単調な感じではありません。
むしろ、子どもならではの、さまざまな面をあわせもった生身の人間として描かれているように思います。
テーブルの足の形が上思議。食器、イスやベッドの描き方もひじょうに個性豊か。
真っ黒いくまたちと、色のついたそのほかのものの対比も興味深い。
サイズ 天地 18.2センチ×左右 25.8センチ