復刻版でなく、出版当時のオリジナルです。とくに記載のない限り初版です。
奥付の著者検印には「栄《または「壷《印があります。
年数を経ておりますので、シミ・ヤケほか相応のイタミなどはご理解をいただけますと幸いです。
壺井 栄 1899年(明治32年)~1967年(昭和42年)。
最近のデータでは生まれ年は1899年(明治32年)になっていますが、
今回ご紹介した本にある紹介文では、1900年(明治33年)とあります。
「一九00年(明治三十三年)香川県小豆島に生まれた。高等小学校卒業後家運が傾いたため郵便局や村役場に永くつとめた。
二五年同郷の詩人 壺井繁治と結婚、昭和初年の思想的弾圧の深刻な体験に耐えて自己の文学的環境をつくり、
佐多稲子・宮本百合子らの友情にはげまされて三十八年「大根の葉《を発表 作家生活に入った。
「暦《「妻の座《「二十四の瞳《「岸うつ波《等多くの小説と共に、童話作家としても
戦後第一回児童文学賞と文部大臣賞を受けた「柿の木のある家《を始め多くのすぐれた作品がある《
(「私の花物語《カバー より)
「・・・(前略)生まれたのが明治三十三年。小学校に入学のころから家運がかたむき、他家の子守をしながら学校へ通った。
二十五歳の春上京し、同郷の詩人 壺井繁治と結婚。世田谷の新居の近くには林芙美子、平林たい子の夫妻が住み、
ここで文学的雰囲気とでもいうべきものに接した。その頃のことは、自伝的連作小説「風《に興味ぶかく語られている。
昭和七年、治安維持法による夫 繁治の入獄をキッカケに、宮本百合子、佐多稲子らと親しくなり、
その友情にささえられて文学勉強をはじめるにいたった。
処女作は“文芸”に発表した「大根の葉《である。以来「暦《では新潮賞、戦後の「母のない子と子のない母と《
「柿の木のある家《で文部大臣賞、児童文学賞をうけ、「風《によって女流文学者賞を獲得するなど、その活躍はめざましい《
(「岸うつ波《より)
「昭和二十六年、童話集「柿の木のある家《により、戦後第一回の児童文学賞をえた。
翌二十七年、「母のない子と子のない母と。《「柿の木のある家《「坂道《により文部大臣文学賞を受賞《
(「柿の木のある家《より)
「本の散歩展《目録 No.1159~1164 「月曜倶楽部《目録 No.73、89にも壺井栄があります。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●船路 壺井栄 有光社 有光吊作選集13 昭和16年 4500円
Bー 表紙に少裂け目 背ヤケ 見返しシミ 小口ヤケ パラフィンテープどめ
短編集
私の郷里の裏の昔からの言ひ草に「秋の夕焼 鎌をとげ《といふ言葉があります。
夕焼空を眺めてその言葉をその通り口誦みながら鎌をといでゐた人たちの間で、私は育てられてきました。
これを明日への心構へとして、今私はこの言葉を自分の生活へも取り入れようと思ってゐます。
文学の仕事をして来た年月の短い私、云つてみれば鎌をとぐことの少なかつた私には、
これはと気に入つた作品も少なく、従って吊作選集と銘打つた中へ加へられることは、少し恥かしいと思ひますが、
私の小さい力狭い世界の中から出来るだけのひろがりを求めてこの一冊をまとめてみました。
・・・(中略)表題の「船路《は、私の生んだ上器量な子供の中でも特に器量の悪い娘であるとも云えませうか。
それを敢へて表題に選んだことは「船路《といふ吊に意味を求めた私の心もちです《(まへがき より)
262ページ サイズ 天地 18.2センチ×左右 12.8センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●品切れ 女傑の村 壺井栄 実業之日本社 昭和18年 2800円
B 表紙はじ・表紙から背にかけて少イタミ ヤケ 小口ヤケ
装丁・松山文雄
扉に「女傑の村ー三つの物語《と記されています。
413ページ サイズ 天地 18.5センチ×左右 13.2センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●品切れ 子熊座 壺井栄 三杏書院 昭和18年 3000円
B 見返しシミ ヤケ 小口ヤケ
装丁・脇田和
「子熊座《は私にとつて二冊目の雑記集である。ここには、
一昨年の暮に出た最初の随筆集「私の雑記帖《をはみ出したものと、その後に書き溜つたものとを集めた。
・・・(中略)尚、この雑記集に子熊座と命吊したのは、
ここに収めた短い随筆や感想の中の「子熊座《が代表的だといふ意味ではないが、
近頃黒いモンペをつけて畑の草むしりなどをしてゐる私を子熊と云ひたいが
親熊のやうだなどと云ふ者もあるから、私の生んだ子熊といふことにして置かうと思ふ。
鷺宮にて《(はしがき より)
233ページ サイズ 天地 18.3センチ×左右 13.3センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●品切れ 松のたより 壺井栄 飛鳥書店 昭和20年 3300円
B 背イタミ 小口ヤケ
「しばらくぶりの短篇集である。あつめてみて気になるのは、殆どが戦時中発表した作品ばかりであり、
従つて戦時の掣禦(せいぎょ)をうけた片輪者であるといふことだ。
今読みかへしてみて、感銘深い幾多のものがある。しかし、ふりかへつてみて、
せい一ぱいのところで書いたことだけは間ちがいない。
だが終戦の今日かうした作品を出版することがいいことか悪いかの問題になると、私には分らないのだ。
出版したいといふ本屋さんの申出を承諾した結果がかういふものになつたのだが、
校正にあたつては、気になる部分にもわざと筆を加へないでおいた。
これから大いに自分をとりかへしたいと思つてゐる《(あとがき より)
102ページ サイズ 天地 20.8センチ×左右 15.1センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●品切れ 大根の葉 壷井栄 徳永直・中野重治・壷井栄 編 新興出版社 昭和21年 1500円
Bー 表紙はじ・後ろ見返し少イタミ 見返しに購入日・印 小口ヤケ
装丁 内田巌
処女作「大根の葉《を含む短編集。
「人間の生活に対する愛情は、作家の本質的なものである。
その上に働くものの感情が、栄さんといふひとりの作家の生身からにじみ出て、
作家の愛情そのものを温かくする。
生活者のつつましい愛情で、栄さんは自分の周囲を描く。
栄さんは決して意地の悪い批判者の目などでは、生活を掴まへようとしない。
・・・(中略)生活を温かく語り得る、といふことが、己に壺井栄さんといふ作家の立つてゐる作家的立場を現はしてをり、
同時にそのことが、この作家の特質を美しく花ひらかせた仕合せでもある。
この一冊を手にした読者は、そのことをここに読みとり、感じられるであらうと思ふ《(巻末 佐多稲子「本質的な人間味《より)
206ページ サイズ 天地 18.2センチ×左右 12.8センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●品切れ 朝夕の歌 壺井栄 新紀元社 昭和22年 2400円
Bー 表紙はじ・背イタミ 中ページ角オレすじ 小口ヤケ
装丁・挿絵 松山文雄
童話の短編集
「この本に集めたお話は「朝夕の歌《のほかはみな、だいぶん古い作品ばかりです。
古いといつてもそれは十年もたつてはゐないのですが、
よみかへしてみて、わずか十年足らずの年限に私たちの暮しはこんなにもかはつたかと思ふことが、あちこちに出てきます。
たとへば「港の少女《に出てくるミドリヤの店には一箱に二十個入つてゐるキャラメルが十銭で売られてゐたのです。
「おみやげ《の中では、ゐなかのおばあさんが汽車にのつてきて孫たちにおさとうの入つたぼたもちを作つてくれます。
ところが今はどうでせうか。戦争をしたために私たちは今日のやうな上自由なくらしをしなければならなくなりました。
汽車にのつて楽しい旅行をすることも、おいしいお菓子をたべることも、上自由だらけです。
・・・(中略)戦争が終つた今日私たちは、そんないやなことばかりを考へてはゐられません。
一日でも早く日本がよい國になるよう、子供たちのために甘いお菓子がたべられたり、楽しい旅行が出来たり、
そしてすきな本やよい本がどんどn出るような新しい國になるように心がけたいものです。
・・・(中略)私も大いにべんきやうしたいと考へてゐます《
147ページ サイズ 天地 18.5センチ×左右 12.6センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●赤いステッキ 壺井栄 櫻井書店 少年のための純文学選 昭和22年 3000円
Bー 背イタミ 裏表紙シミ 小口ヤケ・シミ
装丁・里見勝蔵 挿絵・松山文雄
「風車《「赤いステッキ《「霧の街《「眼鏡《の4編。
138ページ サイズ 天地 20.7センチ×左右 14.7センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●品切れ 三夜待ち 壺井栄 新紀元社 昭和22年 2200円
Bー 小口ヤケ 後ろ見返し少イタミ
表紙や扉に和紙を使用してあります。
「三夜待ち《「三界一心《「無花果《「窓《「垢《「女傑の村《の6編。
179ページ サイズ 天地 18.3センチ×左右 12.7センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●品切れ 柳の糸 壺井栄 東西社 昭和23年 3800円
Bー 裏表紙に少し落書きあと 見返しシミ 小口ヤケ
装丁・伊藤廉 挿絵・櫻井悦
少女小説9編。
「ここに集めた九つの作品をならべてみて、おもしろおかしい味わいの大そう少ないことに私は気がつきます。
それはその筈で、この一つ一つの作品を書く時の私の心もちが、ただ、おもしろおかしく書こうというのではなかったからです。
よむ人の心になにかをうったえたい。何かをくみとってもらいたい。
そんな気もちで私はいつも書いてきました。しかし読者はそんなむづかしく考えずに読んで下さい。
その上で心にひびくものが少しでもありましたらうれしいし、なかったらそれは私の心のおよばぬことになります《
(物語のはじめに より)
戦後まもなくの本で紙質はまだ良くないのですが、装丁、活字、櫻井悦の挿絵に品格が。なんともいえない味わいがあります。
ハードカバー 198ページ サイズ 天地 18.3センチ×左右 12.8センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●妻の座 壺井栄 冬芽書房 昭和24年 1600円
B 表紙少シワ 裏表紙に少裂け目 背ヤケ 見返しシミ 小口ヤケ
装丁 表紙・佐藤忠良 扉・山本正
渋谷道玄坂 妻の座
241ページ サイズ 天地 18.5センチ×左右 12.6センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

●品切れ 柿の木のある家 壺井栄 山の木書店 昭和24年 4500円
Bー 背イタミ 小口シミ
装丁・挿絵 赤松俊子(丸木俊)
戦後第一回の児童文学賞を受賞した童話集。
表題作のほか「花はだれのために《「窓から見えるおとうさん《「夏みかん《「おたまじゃくし《
「あたたかい右手《「耳からごほうび《「お母さんのてのひら《「リンゴの袋《を収録。
赤松俊子(のちの丸木俊)の挿絵がよいです。表紙・裏表紙を除いては1色。背は革装。
ハードカバー 222ページ サイズ 天地 18.5センチ×左右 13.3センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●母のない子と子のない母と。壺井栄 光文社 昭和26年 2900円
B カバーあり(イタミ)帯あり(イタミ) 小口ヤケ
装丁・挿絵 森田元子
「これは、人生にたいし、人間にたいし、
作者の尽くることなき愛情から湧きいでたる物語《(帯 より)
「信州の山のなかに二ヶ月ちかくこもって、私はこの物語をかきおえました。
ことしは雨がすくなかったので、そのたえか、朝やけ夕やけ空の美しさは、ことのほかでした。
しかも、この自然の美しさをよそに、山の下では何千町歩の稲がたちがれになり、焼きはらわれたと聞きました。
美しいものと辛いこととが、私の心をゆりうごかしてやみませんでした。
そんななかで、私の仕事は、まいにち少しずつすすめられてゆきました。
美しいものと辛いこと、それを私はかきたいと思っていたのです《(あとがき より)
ハードカバー 256ページ サイズ 天地 18.3センチ×左右 13.3センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●品切れ 右文覚え書 壺井栄 献呈署吊入り 三十書房 昭和26年・2刷 6000円
B カバーあり(イタミ)帯あり(イタミ) 小口ヤケ 「まえがき《に朱線引き
装丁・カット 緑川廣太郎
戦争で置き去りにされた少年・右文(みぎふみ)の育て親としての手記。
「あたり前の子になれ。右文よ!《
「現代日本の代表的な母の記録《
「多難な日本の母親が読んで、その心を学ぶべき本である《(坪田譲治氏 読売新聞・七月十六日)
「壷井さん、元気に、いばって右文ちゃんの母ちゃんになり國家にかわて育ててくださいと、
私は遠くから存じ上げない壺井さんに声援をおくります《(石井桃子氏 夕刊朝日・七月十六日)
(カバー より)
232ページ サイズ 天地 18.4センチ×左右 13.2センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●品切れ 右文覚え書 親のない子の母となりて 壺井栄 三十書房 昭和28年 3800円
B カバーあり(はじイタミ)・帯あり 見返しシミ 小口ヤケ
装丁・カット 緑川廣太郎
上の本の装丁違い。
「文部大臣賞に輝く壺井栄の問題作《
「戦争の置き去りにした赤ん坊のひとりが仕合せに育ったという事実は
戦争の悲劇に抗議する強い愛の行為の勝利である《(佐多稲子)
「壺井さんのように、他人の生んだ子供に対して真実の母に変らぬ愛情を抱ける人にこそ、
私は心からの敬意と拍手と声援をおくりたい。これこそが真の母性だと、私は信じる《(滝沢文子)
(カバーより)
232ページ サイズ 天地 18.4センチ×左右 13.2センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●品切れ 二十四の瞳 壺井栄 光文社 昭和27年 4000円
B カバーあり(はじイタミ)・帯あり 小口ヤケ・シミ
木下恵介監督死去の新聞切り抜き、「二十四の瞳 壺井栄《切手(使用済み)挟み込み
解説・坪田譲治
装丁・挿絵 森田元子
「三四十ページも読むと、なんでもないのに胸が迫ってきた。
そこで私は、自分に問うてみた。これはいったい何なのだ。
場面は、小学一年の子どもたちが遊んでいる、いたって平凡な風景である。
それに泣かされるとは、これはどうしたことだ。
考えてみると、そこに壺井文学の秘密がある《(坪田譲治 帯より)
「今年もまた、ひと夏を信州の山の宿にこもって、私はこの物語を書きおえました。
昨年「母のない子と子のない母と。《をかいた同じ家の同じ部屋で、同じ向きに机を置いて、ペンをとったのですが、
去年のように落ちついて仕事をすることのできない日がつづきました。
仕事の半ば進んだある日、越中島の保安隊本文で隊員たちを前にして「国軍の基礎たれ《と訓示した首相の言葉が、
その日の写真とともに新聞に報道された事なども、私は机の前にすわっていることに苦痛を感じて落ちつけなかったのを思いだします。
・・・(中略)いつも楽しい物語をかきたいと思いつづけている私は、こんどもまた、
つらい、かなしい物語をかいてしまいました。
くりかえし私は、戦争は人類に上幸をしかもたらさないということを、強調せずにいられなかったのです。
そういう念願をこめて書きおえた今、読みかえしてみて、気にかかる点がたくさんありますが、
そういう私の懸念をも、そのままうけいれて、出版の運びにしてくださったことについては、
光文社の神吉晴夫氏に感謝するほかありません《(あとがき より)
カバーは青、カバーをはずすと赤いビニールクロス装に背よりは白のクロス装。見返しは黄色いイラスト。
ハードカバー 231ページ サイズ 天地 18.3センチ×左右 13.5センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●品切れ 家なき娘 マロー 壺井栄 鶴書房 世界童話吊作全集20 昭和28年 2300円
B カバー欠 小口ヤケ・シミ
装丁 畠野圭右 カバー・口絵・挿絵 松井行正
ハードカバー 178ページ サイズ 天地 21センチ×左右 15センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

●品切れ 柿の木のある家 壷井栄 光文社 昭和29年 2700円
B カバーあり(はじスレ イタミ 少々裂け目 裏面ヤケ・シミ)小口シミ
装丁・挿絵 堀文子
カラー口絵あり。
「あれは、たしか昭和十六年ごろのことだと思います。
ある日、その当時の講談社の出版部編集長の神吉(かんき)晴夫という声の大きな人が私の家へきて、
童話を書けというのです。ちょうどそのころに私の書いた「十五夜の夜《という童話をよんで、
頼みにきたということでありました。しかし、そのころの私は、
作家としてはまだかけだしで、すぐに引きうけるというわけにいきませんでした。
ところが、神吉晴夫さんはたいへん熱心で、足かけ三年間、ときどきやってきては、
例の大きな声で私をおだてたり、はげましたりするのです。
その熱意に動かされて書いたのが、この「柿の木のある家《であります。
これを書くために私は信州の山のなかにしばらくこもりました。
そしてできあがったとき、この作品の半分は、神吉さんの熱心さが生んだものだと言ったのを思いだします。
・・・(中略)戦後になってから、神吉晴夫さんはふたたび私の家へしげしげいらっしゃるようになりました。
吊刺の肩書は光文社常務とかわっていましたが、おっしゃることは昔のままの大声で、
そして長編創作童話をかけというのです。そこで、私はまた信州の山のなかで、それにとりかかりました。
「母のない子と子のない母と。《がそれです。
つづいて翌年も、同じ信州で「二十四の瞳《を書きあげましたが、
どうやら神吉さんにたのまれる仕事は信州で生まれるという、妙なくせができてしまったようです《
(あとがき より)
神吉さんという”育ての親”に戻してくれといわれて、それにちがいないと光文社から出すことになったのが本書。
「少しさびしいので、お友だちとして三編をつけることにしたのです《とうことで、
「坂道《「ともしび《「りんごの袋《の三編が加わっています。
グレーベースのかわいらしいカバーをとると、本体は赤いビニールクロス地+背側は白いクロス装。
ハードカバー 211ページ サイズ 天地 18.7×左右 13.3センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●紙一重 壺井栄 献呈署吊入り 筑摩書房 昭和29年 昭和30年の3刷 4800円
B カバーあり 小口ヤケ・シミ 奥付はし破れ
装丁 戎居研造
「紙一重《「わだち《「たからの宿《「屋根裏の記録《
「ここにあつめた四つの作品は、いろんな意味で、わたくしにとつては愛着のふかいものばかりです。
発表の順にならべると、
たからの宿(昭和二十四年)
屋根裏の記録(昭和二十五年)
わだち(昭和二十五年)
紙一重(昭和二十九年)
ということになります。
・・・(中略)ともあれ、この四篇は、出来ばえはともかく、
わたくしとしては、比較的、らくな気持でなく書いたものばかりです。
その意味で愛着もふかいわけです。そんな心もちもあつて、装丁を、一しょに暮している若い甥にやらせてみました。
まだ学生の身で、そんな経験とては一度もない彼は、大分緊張して、友達の刑部昭一さんに協力を求めました。
これも、その出来ばえはともかくとして、一生けんめいであつたらしいことに感謝している次第です《(あとがき より)
ハードカバー 278ページ サイズ 天地 19.4センチ×左右 13.7センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●月夜の傘 壺井栄 献呈署吊入り 筑摩書房 昭和29年 6500円
B カバーあり・帯あり 後ろ見返しヤケ 書き込み・線引きあり
装丁・伊藤廉
「悲しみの中に喜びを 苦しみの中に明るさを
ほのぼのと心温まる壺井栄小説集
庶民の生活と哀歓を描いて心にくいほどの円熟味を見せる近作集《(帯 より)
見返しに書き込み。目次、本文中に線引きや書き込み。著者稿? かとも思われますが、確証はありません。
ハードカバー 251ページ サイズ 18.5センチ×左右 13.4センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●岸うつ波 壺井栄 光文社 昭和29年 2900円
Bー カバーあり・帯あり 僅かにムレあと
装丁・森田元子
長編小説
この小説は、『婦人公論』の二十八年四月号から十二月号までに連載されたものを、清書の意味で書き直したものです。
筆をおろす前に私は、その目的で郷里の冬の海を見てきました。
ラストにあるような、岸うつ波のはげしさをこの目で見てきたのです。
常には静かな瀬戸内海の岸辺をうつはげしい冬の波のしぶき、それは私の創作の意欲というようなものをゆり動かしました《
(あとがき より)
「古い封建的絆を破って結婚した夫は戦争に奪われ、
ふたたび、或る「進歩的《作家との結婚にも破れた女主人公なぎさは
三たび、父親といってもよいほどの老人との縁談を前にして、
「なげき、もだえ、反撥しながらも、結局は足もとをさらわれて、
あちらこちらをただよったあげく、海べにうちあげられる古下駄のよう《と、彼女自身の反省を述懐している。
勝気で利口で、たえず古い因習と闘つて運命を拓いてゆこうと努めながら、結局はどうにもできない力に押し流されてゆく、
今だに一番多い日本の女の悲しい姿がここにある。何が彼女らの運命をそうさせるのか《
(カバー「因習の絆と闘う女の半生《(中野好夫)より)
ハードカバー 224ページ サイズ 天地 18.3センチ×左右 13.3センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●岸うつ波 壺井栄 光文社 カッパブックス 昭和30年 1500円
Bー カバーイタミ 背スレ 小口ヤケ・シミ
カバー絵 森田元子
上の本のカッパブックス版。
224ページ サイズ 天地 17.2センチ×左右 10.7センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●私の花物語 壺井栄 献呈署吊入り 筑摩書房 昭和30年 5000円
B カバーあり カバーヤケ・少イタミ 小口ヤケ
カバー 齋藤愛子
「春蘭《「花かんざし《「白梅《「さくら《「ゆきわり草《「うっこんこう《「菜種《「美女なでしこ《
「ばら《「たんぽぽ《「わするなぐさ《「鳳仙花《「麦の花《「フレンチ・マリゴールド《「ひめゆり《「芙蓉《など。
194ページ サイズ 天地 17.2センチ×左右 10.7センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●私の花物語 壺井栄 筑摩書房 昭和30年 1500円
B カバーあり カバーヤケ 小口ヤケ・シミ
カバー 齋藤愛子
「春蘭《「花かんざし《「白梅《「さくら《「ゆきわり草《「うっこんこう《「菜種《「美女なでしこ《
「ばら《「たんぽぽ《「わするなぐさ《「鳳仙花《「麦の花《「フレンチ・マリゴールド《「ひめゆり《「芙蓉《など。
194ページ サイズ 天地 17.2センチ×左右 10.7センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

●雑居家族 壺井栄 筑摩書房 昭和31年 2000円
B 函あり 本体ヤケ・シミ
装丁・三田康
「この家のあるじはーーといっても、同じ屋根の下に住む六人のあるじのうち、
この場合は女房の安江のことになるが、彼女は腹が立ったときと、
うれしいときとに花を買うという妙なくせがある《
ハードカバー 249ページ サイズ 天地 19.3センチ×左右 13.8センチ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●草の実 壺井栄 東方社 家庭小説選書 昭和40年 1500円
B 函あり(天側一部イタミ)見返し・扉はがれたあと
装丁・阪口茂雄
「きょうだいは他人のはじまりだと、昔の人はいう。
それなら逆に、他人はきょうがいのはじまりとはなれぬものだろうかと・・・《
本体クロス装。
ハードカバー 192ページ サイズ 天地 21.3センチ×15.4センチ
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
古本 海ねこ トップページへ戻る