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cover●illustration by Satomi Kohno ●Thanks to viiru裕子
北欧からやってきた
絵本たち〜新刊〜


12月、ヘルシンキの街はクリスマス・ムード一色です。
気温こそ零下ですが、心は寒くない。
だって、クリスマスがやってくるから。
大人も子どももその日を楽しみにしています。
書店に並ぶのは、北欧各国の絵本たち…。
新刊でもカバーはついていないのが普通です。

大型絵本その1・大型絵本その2こぶりの絵本others


英語以外の文字は表示しにくいので、
書名・著者名など正確な表記は画像写真をごらんください。

■大型絵本 その1■


cover品切れ *フィンランド語版 Pellen uudet vaatteet(ペッレくんの新しい洋服)
Elsa Beskow(エルサ・ベスコフ)

GUMMERUS 2002年 3700円 新刊 カバーなし 定価20.6ユーロ

オリジナルは2002年、スウェーデンで出版。
ペッレくんは背が伸びて、洋服の丈が短くなってしまいました。
そこで、新しい洋服が欲しくて、自分でヒツジの毛を刈ります。
刈った毛を大人たちに渡して毛を紡いでもらい、洋服をこしらえてもらうようにお願いします。
お礼にと、子守をしたり、農作業をしたりと、懸命に働きます。
毛糸の色は自分で染めて、ついに新しい洋服が完成する日がやってきました…。
新しい洋服を身にまとって、お世話になったヒツジにお礼を言うペッレくん。
言葉がわからなくても、意味は十分に伝わってきます。心洗われるような思いがいたしました。
人としてまっとうな何かを忘れかけていませんか?
…そう問いかけられて居ずまいを正したくなるような、でも、説教くささはなく、あくまで優しく美しい絵本。
扉は、ききょうやレンゲなど、野花の絵柄。どのページも1枚1枚が絵のようにきれいです。

エルサ・ベスコフ(1874-1953)は、ノルウェー人の父とフィンランド人の母のもとに、スウェーデンで生まれました。
6人の子どもをモデルに、実際に子どもたちの反応を見ながら絵本を作ったそうです。
日本では「ブルーベリーもりでのブッテのぼうけん」「もりのこびとたち」
「おひさまのたまご」「どんぐりぼうやのぼうけん」などで知られています。
その後、スウェーデンですぐれた本を出版した画家や写真家には「エルサ・ベスコフ賞」が贈られるようになりました。
ハードカバー サイズ 天地24.3センチ×左右30.2ミリ
画像写真は天地が少し切れています。



cover品切れ *フィンランド語版 Eemelin sadas puu-ukko(エーミールとねずみとり)
Astrid Lindgren(アストリッド・リンドグレーン)Bjorn Berg(ビヨルン・ベルイ)

ヘルシンキ WSOY 2003年 3600円 新刊 カバーなし 定価17.90ユーロ

オリジナルはスウェーデンで、リンドグレーンが66年執筆。
「エーミールと大どろぼう」に続く、エーミールシリーズの第2作。
エーミール少年はヤンチャで、いたずらばかり。賢くて行動力たっぷり。大人たちはまったくかないません。
納屋にたてこもったら(叱られて入れられた?)カギがあかなくなって出られなくなってしまいました。
でも、そんなことぐらいじゃあきらめないエーミール。
暖炉の中へ入り込み、煙突をよじのぼって、みごと脱出〜!
本当は優しいところもあり、正義感に満ちた男の子なのです、たぶん。
ちなみに、エーミールは、リンドグレーンのお孫さんがモデルだとか。元気な男の子だったのでしょうね。
クラシカルなタッチの絵が、絵本の原点というか、とても新鮮な感じがします。

リンドグレーン(1907〜2002)は、スウェーデンのビンメルビー生まれ。
高校時代、クラスメイトに「将来、きっと作家になるだろう」と言われたものの、
逆らって絶対、本など書かないと決心したというのは有名な話。
高卒後、秘書になる勉強をしようと首都ストックホルムへ。
そこで結婚して2児の母となりました。1944年3月、ストックホルムに雪が降り、
散歩に出て転び足をくじいてしまいます。1週間ほど寝ていなければならず、
何もすることがなくて物語を書いたのが始まりです。
「長くつしたのピッピ」で有名になり、「ピッピ船にのる」「ピッピ南の島へ」と続編が書かれて
世界中の子どもたちの愛読書に。ほかに「やかまし村の子どもたち」「少年探偵カッレくん」
「さすらいの孤児ラスムス」など。1958年、第2回国際アンデルセン賞を受賞。
ビヨルン・ベルイは、3作めの「エーミールと60ぴきのざりがに」も含め、エーミール・シリーズ3冊の絵を描いています
(日本語版のハードカバーは、いずれも版元品切れ)。
ハードカバー サイズ 天地21.2センチ×左右27センチ



cover品切れ *フィンランド語版 Yksinainen peikko ja muita loruja(ひとりぼっちのトロール ポエム)
ja muita loruja   Kirjoittanut Eeva Koljonen  Kuvittanut Maija Ranta

ヘルシンキ Kirjalito 2002年 2200円 新刊 カバーなし 定価15.10ユーロ

1-2ページに1篇ずつポエム、そして、イラストがのっています。
Maija Rantaは、女流イラストレーター。
ちょっとくすんでいながら、深みのある色合いが独特です。
少年や少女のイラストは洋服がとってもキュート。人も動物も優しい目をしています。
かと思うと、ファンタジックな大人っぽいイラストもあります。
「中ページを見る」の写真、ちょっと暗くなってしまいましたが、現物はもっときれいです。
ハードカバー サイズ天地30.3センチ×左右21.6センチ

中ページを見る



cover品切れ *フィンランド語版 Mayran jaahyvaislahjat(わすれられないおくりもの)
Susan Varley(スーザン・バーレイ)
 GUMMERUS 1900円 新刊 カバーなし 定価17.90ユーロ

オリジナルはイギリスで出版された、スーザン・バーレイのデビュー作。
サンクタロースの国フィンランドで読まれているフィン(フィンランド)語版。
国内ではまず入手不能。一味違ったプレゼントにもいいかもしれません。

アナグマは、いつもみんなに頼りにされています。
彼は、年をとっていて、知らないことがないというぐらい物知りでした。
そして、自分が死ぬのがそう遠くないことも知っていました。
ただ、あとに残していく友達のことが心配で、
自分がいつか長いトンネルの向こうに行ってしまってもあまり悲しまないようにと言っていました。
あるとき、アナグマは夢を見ました。そして、長いトンネルの向こうへ…。
死んでしまったのです。残された動物たちみんな、悲しくて悲しくて仕方ありません。さて…。

生と死とは? 身近な人を失った悲しみを、どう乗り越えていくのか?
テーマは深いですが、水彩とペンによるイラスト、全体のトーンがとてもあたたかく、読後感もやさしいです。
しかも、余韻を残し、いろいろなことを考えさせてくれます。
子供に語りかける絵本でもあり、大人を癒す本でもあります。

スーザン・バーレイは、美術学校に通っていたころから絵本作家を目指し、
卒業制作としてつくっていた『BADGER'S PARTING GIFT』でデビュー。
電力会社のTVコマーシャルでも活躍。長年にわたって「アナグマシリーズ」の絵を担当しています。
ペンと水彩で描かれるイラストは、優しさとあたたかみに満ちています。
日本語版「わすれられないおくりもの」は評論社より。
ハードカバー 左右26.2センチ×天地21.5センチ



cover品切れ  *フィンランド語版 Pikku-Nallen huviretki(小さなくまちゃんのピクニック)
Fritz Baumgarten
GUMMERUS
3200円 新刊 カバーなし 定価16.70ユーロ

オリジナルはドイツで出版。
小人(トロール?)とくまちゃんが一緒にピクニックに出かけます。
小人が運転する手作りのトロッコで。
森に入ると木の枝にぶつかりそうになったり、川にはまってトロッコのタイヤがはずれたりと大変。
だけど、森の仲間たちがみんなで手伝ってくれて、どうにかこうにピクニックが進んでいきます。
右ページはカラーのイラスト、左ページは1色のイラストで、わくわくドキドキの大冒険が描かれています。
森の小さな動物たちがあちこちに登場する、チャーミングな1冊。

Fritz Baumgarten(1883-1966)は、ドイツの作家で、絵本を多数手がけています。
英語版なども出ているので、世界中で人気のある人ではないかと思います。
日本では知られていないのが残念。
ハードカバー サイズ天地21.1センチ×左右27.2センチ

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cover品切れ *フィンランド語版 Jekku ja Resu(犬のイェックとレス)
Fritz Baumgarten
GUMMERUS
3200円 新刊 カバーなし 定価16.70ユーロ

オリジナルはドイツで出版。
犬のイェックは、友だちの犬レッスと仲良し。ジャレあって駆け回っては、いつも一緒に遊んでいました。
肉屋さんのショーウインドウにはおいしそうなものばかり。
真剣にのぞきこむ2匹(のぞきこむ後ろ姿がかわいい!)、
ついにはソーセージをくすねて逃げるいたずらぶりです。
ところが、そんな大の仲良しどうしにも、お別れはくるものです…。
人生は哀しいもの。街角ですれちがっても、もうジャレ合うこともできません。
だって、お互いつながれてるから…。

「良き古き時代のクラシック、ポエム調、2歳から6歳向き」だそうですが、
最後はなんともシニカル、現実的…というべきか。
「鶏はいくら羽ばたいても羽ばたいても飛べない」なんていう文章まであって、確かに“ポエム調”。
かわいくて、やがて哀しき。2歳から6歳向きにしては驚くほど重たいですが、見方によってはとても文学的ですね。
この作者のほかの作品も読んでみたくなりました。
ハードカバー サイズ天地21.1センチ×左右27.2センチ

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cover品切れ フィンランド語版 Lady Lupiinin Kaytosopas(レディ・ルパンの礼儀作法)
Babette Cole

MAKELA 2002年 2200円 新刊 カバーなし 定価18.40ユーロ

オリジナルはロンドンで2001年出版。
レディ・ルパンをはじめ、適齢期の高貴な犬たちがエチケットの授業を受けています。
真のレディたるもの、エチケットについて正しく学ばなくちゃね。
ところが、食べ物を見たとたん、レディもへったくれもありません。
大好物の骨がくるやいなや目の色が変わり、うなりあって、はげしい争奪戦に。
だめだめ、このままじゃ。骨はきれいにお皿に盛り付けて、ナイフとフォークで食べましょうということになります。
みんな、きちんとお行儀よくテーブルについて、生ガキ、パスタ、エスカルゴ、大きなエビ
…きれいに食べようと努力します。
ところが、ひょんなことからついつい地が出てしまって、テーブルはめちゃめちゃ。
そんなレディ・ルパンが結婚することになります。ダンナ様ときちんと家庭を築くことができるのでしょうか。

絵本を多数出版している人です。ねこ、子馬など、動物を主人公にした絵本もお得意です。
コミカルな絵柄が楽しいです。デコラティブなお皿やナイフ&フォーク、食器の柄、
テーブルの上の花、身に着けているアクセのキラキラなど、ディテールまで凝っています。
「Lady Lupin's Book of Etiquette」のアメリカで出版されている英語版は、ペーパーバックでUS$14.95。
ハードカバー 天地23.8センチ×左右23.2センチ
表紙画像は、天地が少し切れています。

大型絵本その1・大型絵本その2こぶりの絵本others






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