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河出書房 日本幼年童話全集

昭和29年から30年にかけて出版された日本幼年童話全集。
レトロモダンな赤い函から本体を引き出すと、黒地に動物の愛らしいイラスト。
背と裏表紙は赤。裏表紙には、赤地に黒・黄・白を配した円。全8巻とも、同じ装丁です。
須田寿さんによる装丁にひかれて手にとり、中を開いてみると、その豪華さに驚かされます。
文章・絵ともに、日本の童話が好きな人でしたら、おなじみの顔ぶれがずらり。
挿絵は、色刷りだと裏面にジンワリ、インクがしみだしています。当時の印刷技術の高さにもご注目ください。
挿し絵、構成、丁寧な解説文など、作り手たちの高い志がひじょうによく具現化されています。
「いい作品を書くことによろこびと誇りをもって従事して」きた日本の童話作家たちの息吹、感じてみませんか。

函があったおかげで本体の製本イタミは見当たりません。
それでも、50年の時間を経ていますので、シミ・ヤケほか多少イタミはあります。
また、当時のお子さんによるものと思われる鉛筆による落書きが函にあったり、
ご家庭で刻まれた歴史がところどころに見られます。

編集代表・小川未明 坪田譲治 浜田広介 酒井朝彦 与田準一
当時の定価385円 地方定価390円
各巻280ページ前後 ハードカバー サイズ 天地 21.5センチ×左右15.7センチ

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●日本幼年童話全集 全8巻揃い●
河出書房 1954年(昭和29年)〜55年(30年) イタミ
品切れ 1万8000円 送料サービス



cover ●第1巻 童話篇1
装本 須田寿
口絵・さしえ いわさき・ちひろ(画像は口絵 雪わたり)
さしえ 高橋秀

巖谷小波 島崎藤村 鈴木三重吉 秋田雨雀
宮沢賢治 山村暮鳥 豊島与志雄 宇野浩二
編集・解説 浜田広介

「この全集の第一巻には、巖谷小波、島崎藤村、鈴木三重吉、
宮沢賢治、山村暮鳥の、いまは世に亡い五人の作家と、
秋田雨雀、豊島与志雄、宇野浩ニとの現存三作家の作品が、
ほぼ同量のふりあてかたにもとづいて収録されておりますが、
実をいうと、これらの中には、幼年むきの作品を書こうなどとは、
作者のがわでそれほどに意識しないで書かれたような作品も
まじっているかと思われます」(かいせつ より)

(函に鉛筆で落書き 函少コワレ 裏表紙・裏見返しクレヨン落書き 小口少シミ)




●第2巻 童話篇2
装本 須田寿
口絵・さしえ 渡辺三郎

小川未明 坪田譲治 浜田広介 酒井朝彦 塚原健二郎
編集・解説 与田準一

「大正期の童話では、その童話精神が、次期の批判に立てば、
「童心」といった、子どもに対する未分化な考えによって、考えられたのが、
したがって、王子と王姫ものが代表するようなメルヘンの世界をあつかった童話が、
昭和期に、はいるにしたがって、目前の子どもと、子どもの生活環境をとりあつかう
という現実描写、あるいは社会意識の中での子どもへと変革されていったなかで、
子どもの心身の生長別、発達段階別の童話という区分も、うまれてきたようです。
生活童話という言葉も、そのじぶん、できたものです。
昭和十年から二十年へかけて、政府の統制機関としての出版文化協会では、
絵本の表紙に、その適齢数字を出させましたし、したがって幼児むき、小学初級むきの
程度別の童話集が、つくられていったのも、この時期でした。
大正末期から、昭和七・八年頃までは、いわば、児童文学の「暗い谷間」といえる一時期です。
子どものための童話の本は、もちろん、日のめを見ていませんし、
児童雑誌は、会員組織の「赤い鳥」があっただけで、ほとんどが、商業主義的色彩におおわれました。
わずかに、「コドモノクニ」「コドモアサヒ」「コドモノヒカリ」といった
月刊絵本が、絵雑誌という制約のなかで、みじかい童話をのせました。
また、初級むきの学年別雑誌が、その制約のなかで、わずかに童話をのせました。
いわゆる幼年童話なるジャンルの、ジャアナリズムでの自然発生は、このへんのところにあったようです。
…しかし、作家がわでは、この、保育的実効性だけが目だつ、いわば、玩具童話、
遊具童話的なツクリバナシ、タトエバナシ、つまり、創作動機の安易な作品に飽きたりず、
それを、幼年童話という呼び方によって、発想のたしかさと、
作品の確かな結晶を、期そうとしたようです」(かいせつ より)

(函コワレ 小口シミ・ヤケ)



cover ●第3巻 童話篇3
装本 須田寿
目次・さしえ 青原俊子
口絵・さしえ 富山妙子(画像は口絵 あひる)

林芙美子 村山籌子 徳永寿美子 村岡花子 北川千代
壺井栄 北畠八穂(きたばたけやお)
編集・解説 高山毅

「この一巻は、ごらんのように、女流作家の作品ばかりをもって、かざることにしました。
児童文学の歴史の上からみますと、こうした分類は、おかしいと思われるかも知れません。
実は、企画会議においても、この点が問題になったのでした。
ほんとうをいえば、女流作家とか男性作家とか区別をしないで、その活躍した時期とか、
作風の傾向とかで分類した方がよいのです。けれども、そういうふうな分類をして、
女流作家を各巻に分散させて行きますと、巻毎に、作品の掲載量がちがって、或る巻はバカに厚く、
或る巻はいちじるしく薄くなって、バランスがとれなくなることがわかりました。
そこで、やむを得ず、女流作家だけで一巻をつくることになったのです。
そうして、一たん、そのつもりで編集してみますと、
たいへんヴァラエティに富んだ、ユニークなものができあがりました。
では、この一巻の、もっとも大きな特色は、どこにあるのでしょうか。
それを一言でいうと、母性愛の文学ということになります」(かいせつ より)

(裏見返しに記名 小口シミ・ヤケ)




●第4巻 童話篇4
装本 須田寿
口絵・さしえ 緑川広太郎

北村寿夫 千葉省三 土田耕平 水谷まさる
小出正吾 大木雄ニ 槇本楠郎 川崎大治
編集・解説 酒井朝彦

(小口シミ・ヤケ)



●第5巻 童話篇5
装本 須田寿
口絵・さしえ 中尾彰

佐藤義美 下畑卓 武田雪夫 奈街三郎
新美南吉 平塚武ニ 与田準一
編集・解説 関英雄

「この巻には、現代の児童文学界で、戦前から中堅作家として
はたらいている与田・平塚・奈街・佐藤・武田の五氏の作品と、
戦時中に新人として世に出ながら、惜しくも夭折した新美・
下畑ニ氏の作品を収めてあります」(かいせつ より)

(小口シミ・ヤケ)



cover ●第6巻 童話篇6
装本 須田寿
口絵・さしえ 須田寿(画像は口絵 ねずみ花火)

岡本良雄 後藤楢根 関英雄 柴野民三
土家由岐雄 久保喬 猪野省三 筒井敬介
編集・解説 佐藤義美

「幼年童話は、高学年童話よりも、幼児童話よりも、童話の本質を強度にそなえているとおもいます。
童話という文学様式の文学は、その本質として、純粋性、理想性、空想性、
自由性<フレキシビリティ、新鮮=時空的可能性>などをあげることができますが、
少年少女は、固定概念が多く、幼児は、意識の度がおさないので、
幼年といえる子どもの存在のあり方が、童話の本質と比較的に多くマッチしています。
…だれかが、いく人かが、子どもを読者対象とする文学を書くことは、社会的責任ですから、
童話作家の作品は否定できることはあっても、童話作家を否定することや、軽視することはできません。
子どもに制度上にも経済力がない今、童話作家への社会的待遇は極めてわるいのですが、
童話作家の多くは、それを超越して、いい作品を書くことによろこびと誇りをもって従事しています。
この巻の作家は、第五巻の作家と同時代の人たちで、ともに現在、
殆どの人が第一線で作品活動をしています」(かいせつ より)

(函に鉛筆で落書き 小口シミ・ヤケ)




●第7巻 童謡篇
装本 須田寿
目次・カット 初山滋

北原白秋 西條八十 野口雨情 浜田広介 水谷まさる
島田忠夫 金子みすず 都築益世 巽聖歌 佐藤義美
与田準一 小林純一 柴野民三 清水たみ子 まど・みちお
編集・解説 巽聖歌

「童謡のたどってきた、三十五年ばかりの歴史的な概観は、この「日本幼年童話全集」の
姉妹篇である「日本児童文学全集」第九巻「詩・童謡篇」(解説・百田宗治)を
見ていただくと、大体のことはよくわかります。その上に特につけ加えることもありませんが、
この本には、更に新しく九名の作家の作品が集録されておりますので、
その作家達の紹介を主として解説することにします」(かいせつ より)

(函に鉛筆で落書き 遊び紙オレ 小口シミ・ヤケ)



●第8巻 幼年劇篇
装本 須田寿
目次・カット 高橋秀
本文 カット 小林昭夫
本文 カット 一小路志乃

斎田喬 内山嘉吉 阿吉良一 岡田陽 岡一太 落合総三郎
小池タミ子 粉川光一 宮津博 永井鱗太郎 小池慎太郎
菱沼太郎 村山亜土 小川信夫 富田博之 柴田秀雄
篠崎徳太郎 正善達三 わざ・よしおみ 中村晋
栗原一登 白井威彦 村井恒雄 島田鉄也
編集・解説 栗原一登
楽譜つき

「この全集中に、幼年劇を入れることになったので、編集の斎田喬とわたしが、
作者の名前を書きぬいて、編集会議にだしました。
すると、ほかの編者から、つぎのような意見がでました。
「これは多すぎる。もっと作者をしぼったらーー」
「この全集のたてまえとして、すぐれた作者四五人にかぎりたいね」
「劇作家のーー古いところで、坪内さん(逍遥)あたりのものから集大成できるといいんだがーー」
「作家としても未知の人が多いんじゃないかーー」
ーーどの意見も、いちおうなっとくできるものばかりです。
それでいて、編者は、幼年劇のとくしゅのありかたを説明して、
原案のわがままをとうしてもらうことにしました」(かいせつ より)

(函少ヨゴレ 小口シミ・ヤケ)

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