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クリスマスの本 アドベントエッセイ

「クリスマスといえば、おいしいごちそう。
クリスマスの絵本やお話の中から、食べ物の出てくるシーンを、
12月25日まで毎日1篇ずつお届けします。
おなじみの本、お気に入りの本、読んでみたかった本…
クリスマスに、今一度手にとってもらうきっかけになったら、いいなぁ…。
大好きなイギリスのお話もさせていただくと思います」


文/カーネーション・リリー・リリー・ローズ

神戸出身、関西在住。
子どもの本と絵本とチョコレートとバラををこよなく愛する、
未公認無認可イギリスびいきの会の一員。



12月26日

cover 〔12月26日〕ボクシングデー(BOXING DAY)

おいおい、今日はクリスマスの翌日!
そうです。クリスマスの翌日のことをBOXING DAYといって、
昔、クリスマスに忙しく働いた使用人や郵便配達人等に贈り物(Christmas box)をして、
1年の労をねぎらったところから、イギリスでは公休日の一つです。

ピーター・スピアの絵本に「クリスマスだいすき」(講談社 1984年)という文字のない絵本がありますが、
クリスマスのワクワクするような準備から、26日の宴の後といった様子までが、リアルなタッチで描かれています。
テレビでも、ごみだらけになった26日のN.Y.が映ることがあります。
欧米の人は、プレゼントの包みを大げさに破るのをマナーにしているようなので、
びりびりと破いた包み紙や箱、ごちそうの残りなど、ごみだらけの26日というところでしょうか。

さて、今日は、紹介しきれなかったクリスマスの本の紹介ではありません。
アドベント・エッセイ+1に、ピリオドをうつべく、
カーネーション・リリー・リリー・ローズという名前について。

「カーネーション・リリー・リリー・ローズ」は、ジョン・シンガー・サージェントという画家
(もともとはアメリカ人ですが、肖像画家としてロンドンやパリで活動)の絵です。
文字通り、カーネーションと百合とバラの描かれた花園の中に二人の女の子が
日本の提灯を持って立っているという、ちょっと幻想的な感じの絵です。

何年か前のテート美術館展のときに、日本でも見ることができました。
それで、その絵を「ふくろ小路一番地」(イーヴ・ガーネット作 絵 石井桃子・訳・
岩波少年文庫 1957年)のラッグルズさん夫妻がテート美術館で見て、
その題名から、結局、生まれてきた長女に“リリー・ローズ”という名前をつけたというお話があります。
子だくさんで、お金持ちとはいえないけれど、小さな幸せに恵まれたラッグルズさん
ご一家の愉しいお話、ぜひ、紹介したかった1冊でした。
が、いかんせん、クリスマスの話がない…というわけで、むりやり、今日ここに!
でも、食べ物の話はちゃーんと! どころか、他の話より多いくらい出ています。

【§5駐車場の冒険】
≪……途中でたべたおひるごはんは軽かったので、ジョンは、おなかがへっていました。
まして、れいのコーヒーとチョコレートが両方はいっているケーキのことを考えると、
食欲は、いっそうそそられました。
そして、あれ、あのとおり、ケーキは食堂のテーブルのまん中にでていましたが、
どんなお皿でも小さすぎるので、銀の台の上にのせてありました!
夢でも見るような、けれども、ほんとにはけっして見たこともないような、
まして、たべたことなどないようなケーキでした!

上には、コーヒー入りのお砂糖の衣がかかっていて、やわらかいチョコレートのつぶつぶが、まわりをとりまいていました。
また、チョコレートつぶつぶは、ケーキのまわりにも、ヒシ型模様においてあって、
うすみどりのロウソクが、お砂糖でできた花型のローソク立てに、まっすぐ立っていました。
そして、一ばん上に、ピーターの名まえと、「お誕生日おめでとう」の字が、
やっぱりチョコレートと銀の玉で書いてありました。

ジョンの目は、そのケーキに吸い取られたようになり、ほかのごちそうなんか見ることもできないくらいでした。
こんなお茶の会って、ジョンは、いままで見たことがありません。
オトウェル連合日曜学校のクリスマスだって、これにくらべたら、あわれなもんです!………………≫


cover



12月25日

cover 「クリスマス物語集」
(アーサー・メランクトン・ホプキンズ文 中村妙子編・訳 偕成社 1979年)


【§ある農家のクリスマス】
≪……ぼくらは、クルミをわって食べました。
お母さんへのおみやげに、まっ赤なリンゴが一ふくろ、いすのわきにおかれました。
ぼくへのプレゼントは、〔いい子の坊やに〕と書いたうつくしいちゃわんで、
これは、アマンダおばさんからのおくり物――いまでもぼくのいちばんたいせつな財産です。
ヘリックおじさんからは、大きなカエデ・シロップ入りのケーキ。
サイラスおじいさんからは、おじいさんのいとめた大ジカの角でつくった柄のついたジャックナイフで、
これもその後、ずいぶん長いこと、ぼくの愛用の品でした。…≫


カエデ・シロップ入りのケーキ、なんておいしそう!
ハチミツ入りもいいけれど、カエデ・シロップも負けていません。
このお話は、作者の忘れられないクリスマスの思い出を書いたもので、
イントロダクションに当たる部分に心を捉えて離さない文章が、あります。

≪クリスマスは、輝かしい時です。
愛とやさしさと、楽しい笑い声の満ちあふれる日、親切な思いつきが、ふつふつとわく日なのです。
クリスマスは、ながいあいだ、わたしたちみんなの幸せのために、役立ってきました。
クリスマスは、たがいに与えあう日、例えてみれば混じりけのない黄金(こがね)です。
この世に愛が続く限り、クリスマスも、決してなくならないでしょう。
世界は、移り変わっています。
ぜいたくな品物があふれ、全てが、むかしよりずっと早いペースで進んでいます。
多くの発明品、高い生活水準。
古い習慣は、省みられなくなり、質素な生活は、過ぎ去った昔のこととなりました。
だからといって、人の心の中にあるもの、大切にしてきた黄金(こがね)、
わたしたち人間を人間らしくしているものは、決して変わることがありません。≫


サンタクロースは、サンタクロースを信じている人の年齢に応じた生き方で存在しています。
小さな子どもたちには、クリスマスのその朝、枕元に何か、いいものを届けてくれるその人です。
「サンタクロースなんかおれへんねんで(いないんだよ)」
と、生意気盛りの小学生には、
「そうやそうや」
と友達と口裏を合わせるけど、僕んとこだけは来る、その人です。
もう少し大きい子には、 「お母さん、サンタクロースが誰か、
妹には絶対、言わんとってよ(言わないでね)」
という存在の、その人です。
もっと大きい子には、
「最近、サンタクロース来えへん(来ない)から、
お母さんに、私がなんかプレゼントしよか?(しようか?)」
という位置づけです。

そして、サンタクロースその人は、この子は、一体何が欲しいんだろう? これかな? あれかな?
眼を覚まさせないように、そっとそっと。
サンタクロースが寝込んでしまってはいけないので、気合が入っていると思います。
他の時期のプレゼントなら、誰かが、手渡し、即刻、子どもが喜ぶ瞬間が見えます。
が、クリスマスのサンタクロース自身は、秘密めいた楽しみを持っています。
その朝まで、見つからないように、見つからないように。

サンタクロースの精神は、子どもの心の中にあり、サンタクロースであるその人の中に息づいています。
大きくなって、サンタクロースにもらったのが、どんなプレゼントだったか忘れたとしても、
その朝が待ちきれず、
「寝ないで、サンタクロースが来るのを見張っていよう」
と言ったこと。
「うちには煙突ないのに、どうやって入ってくるん?」
「デパートの包み紙で包んでたで(もっと気の利いたサンタクロースを求む!)」
と、怪訝な顔をしたものの、朝になったら、きれいさっぱり、
水に流して、喜んだこと。そんなこんなは、どこかに記憶されるでしょう。

またサンタクロースも、どんなプレゼントをあげたのか、
忘れたとしても、準備が見つからないように工夫したこと。
欲しがっているものを探すのに手間取ったこと。その朝のことを想像しながら、
プレゼントを置いたこと。あんなこんなは記憶されるでしょう。
プレゼントは忘れ去られたり、消失したりする運命を持っています。
が、プレゼントを包んでいたサンタクロースの心そのものは、ずっと残るのです。

人が人と喜びを分かち合う限り、存在するのが、サンタクロース。
Season’s Greetings……よいお年を!……
(明日はBOXING DAY→)



12月24日

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cover 「クリスマス・イブ」
(M.W.ブラウン文 やがわすみこ・訳 ベニ・モントレソール絵 ほるぷ出版 1977年/2003年)

≪……おお、ツリーです。みごとなクリスマス・ツリーです。
だんろののこりびに あか あお みどり いろとりどりのかざりが きらきらきらめいています。
きんぎんのほしや モールやくすだまで どこからどこまでおおわれています。

そして ほら―――だんろのまえ てをのばせばとどきそうなところに 4人のくつしたが かかっていました。
ちいさなしろいつつみや オレンジや ふしぎなかたちをしたものが いっぱいつまっています。
てをのばしさえすれば とどくのです。
つつみは ツリーのしたにもありました。
なかでも ひときわおおきなつつみが めだちます。
でんききかんしゃみたいです。
きのまわりを ひとまわりしています。
みんなわかっていたのです。
でも だまっていたのです。みうごきもしなかったのです。……≫


五感に訴える豊かな世界が広がるこの「クリスマス・イブ」。
あれあれ、食べ物は? オレンジだけ?
もっと、おいしそうなものがプレゼントにあったような、ちがうような……。

20歳の娘に聞いてみました。
「『クリスマス・イブ』の絵本に出てきた食べ物覚えてる?」
「プラムの砂糖漬けに、クリスマスの飴に、えーと、他にもいっぱい……」
「それが……、オレンジだけやねん」
「うっそー」
確かに、絵には、クリスマスの飴とオレンジが靴下に入っている絵があります。
が、しかし、文のプレゼントに出てくるのは、オレンジだけなのです。

消えかけの火がぱちぱちとはぜる音、柔らかな敷物、ひいらぎの赤い実や、緑の大きな葉。廊下はまだあたたかで、クリスマスのあたたかな匂い。
――「もみのき、だんろのひ、そして、ああクリスマス・プレゼントの包みの すばらしい匂い。」
ここや、ここ! 私の思い込みのもとは!
プレゼントの中身に、いいにおいのするお菓子や果物がいっぱい入っていると思い込んでいたのかもしれない……。

追記:20歳の娘は言います。
「お母さんがこの絵本を読んでくれたときの
『おお、ツリーです』のところの声は、今もはっきり覚えているわ。
そのページをめくったときの、大きなツリーの絵も一緒に。」
思い出とともに、クリスマスとともに。



12月23日

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cover 「ニッセのポック」
(オーレ・ロン・キアケゴー文 枇谷玲子・訳 スベン・オットー絵 あすなろ書房 2006年)


【§「12月23日より】
≪……家に帰る前に、お店により、おじいちゃんへのプレゼントを買った。
なにを買ったかって? ふん。それは秘密。あしたまでだれにも言わない。
クリスマス・イヴ当日までは、プレゼントのことをべらべらしゃべるもんじゃないんだ。
それから、袋と包みをかかえ、よろよろとおじいちゃんの家に帰っていった。
台所をのぞくと、おじいちゃんは、レバーのパテと、ソーセージと、サイコロ型に
切ったあぶら身たっぷりのブタ肉、焼きリンゴ、マジパン・スライス、エーブレ・
スキーヴァ、ホワイトビールに囲まれていた。……≫


デンマークのクリスマスのお話です。
エーブレ・スキーヴァは注釈にヒメリンゴ型のふわふわした焼き菓子とあります。
ふーむ。エーブルスキーバで検索したら、かわいい丸っこいカステラ菓子みたいな写真が出てました。
おいしそう!

マジパン・スライスも注釈によると、ココアなどで色付けしたマジパンと色をつけない
マジパンを交互に重ねて四角く切ったもの、とありました。ふーむ。
マジパンって、アーモンドペーストのことでしょう?
ケーキ飾りのお人形なんかの素材であったり、チョコレートの中に入っていたり、
あまーかったり、うーん。私は、これだけ食べるのはしんどいかも。

サイコロ型のブタのあぶら身も、身体が温まりそうですが、塩と胡椒より、
ぽん酢かけて食べたほうが、あっさり食べられると、思うのは私だけ?
レバーのパテも苦手だし……。
やっぱり、北欧の人のように大きくなれないです。はい。

ドイツだけがビールで有名なのかと思っていたら、デンマークもカールスバーグで有名らしい。
知りませんでした。何しろ、飲みませんからねぇ。夏も、のどが渇いたときは、
ブルベリー玄米酢のお水割りをくぅーと一杯がおいしい。
で、アイルランドは、黒ビールのギネスが有名だというのは知っています。
昔、アイルランドのおみやげに買って帰った妖精のじいさん(お酒飲みの妖精:クルラホーン)の
小さいドアノッカーが、今、うちのトイレのドアノッカーになっていますが、
そのじいさんの手には、ジョッキが! 北欧のニッセに風貌が似てますね。多分、ご親戚でしょう。



12月22日

「妖精ディックのたたかい」
(キャサリン・M.ブリッグズ文 山内玲子・訳 岩波書店 1987年)


【第6章 楽しきかなクリスマス】
 ≪……主人の目が厳しくてお祭り騒ぎのできない近くの農家からも、陽気な労働者たちが集まってきていた。
あわせると、二十人以上はいたにちがいない。
マーサ、ディリジェンス、サミュエル坊や、下男のネッド、チャリティ、
それからもう5、6人が目隠し鬼をして遊んでいた。
レイチェル、マライア・パーミンターといちばん年かさの女中ナンシーは、
クリや野生のリンゴを焼いていた。
きまじめでもの静かな召使いジョナソン・フレッチャーは、ラムズウール
(*エールに香料を加え、焼きリンゴを入れるクリスマスの飲み物)を
つくって、リンゴが焼けたらすぐにも入れられるようにしていた。……≫


この作者は、民俗学・妖精学の第一人者です。
その作者が、イギリス・コッツウォルズを舞台に、家つき妖精を主人公に書いたお話です。

イギリスのリンゴは、手の平に乗っかるような小さなものが多いです。
日本のリンゴほど洗練された味ではないものの、ジューシーです。
自動販売機なんか、どこでもここでもないイギリスで、リュックに忍ばせていたら、
ジュース代わりにのどを潤してくれます。
食べ終わった芯は、野原にポイ捨てしても、大丈夫というのも、地球に優しい。
スイスでもリンゴを持ってハイキングしました。
登山でなく登山電車で登るのですが、山を見ながら食べるリンゴのおいしいこと。
スーパーの進出で、ペットボトルの飲料水の普及があっても、
今も、駅には、果物屋さんのストールがあったり、
いわゆるキオスクみたいなところにリンゴが置いてあったりするのを
みると、まだまだニーズがあるのでしょう。

で、コッツウォルズです。
この有名な田舎地方は、鉄道から離れたところにある分、今もたぶん開発と無縁で、
このお話と同じ風景やお屋敷が残り、素敵な村々が点在しています。
シェイクスピアの生誕地で有名な、ストラッド・フォード・アポン・エイボンに近い村に滞在したとき、
そこで出会ったタクシーの運転手さんは、短髪で、耳にピアス、
しっかりした筋肉質の腕にはタトゥの入った風情のいわゆる労働者階級のタクシー・ドライバーでした。
上着を着ていたので、あくまで想像ですが、映画「リトルダンサー」のお父さんを思い出してください。
見た目は、やんちゃそうでしたが、料金も良心的だったし、
約束の時間も守るので、ロンドンに戻る朝にも、ホテルまで来てもらいました。
駅までの道すがら、眼の前に広がるコッツウォルズの風景に、私が
「いいですねぇ。こんな景色の中に暮らせて」
というと、
「そうだろ。僕は、別の街出身なんだけど、ここに家を買ってよかったと思うよ。
毎朝起きて、窓を開けると、この景色が広がっていて、
それをみながら、コーヒーを飲むのさ。ラッキーな男さ。」
と応えてくれました。人は風貌で決めてはいけないとはいうものの、ちょっと新鮮でした。
まだまだコッツウォルズも大丈夫。ああ、そうそう、彼が言ってましたよ。
こんなに素敵な場所なのに、日本人は、あんまり来ないねぇ、と。
ロンドンだけじゃなく、また、観光バスで素通りじゃなく、ゆっくり来てねって。

cover ●同じ画家の関連本●
妖精の時代
キャサリン・ブリッグズ
石井美樹子・海老塚レイ子・訳
¥3360

『夏の夜の夢』『妖精の女王』など妖精文学が頂点をむかえたイギリスの17世紀。
フォークロアの第一人者が伝承と文学を検証し、妖精という存在の意味を解きあかす名著です。

出版社: 筑摩書房(2002年)
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12月21日

「クリスマスをまつリサベット」
(アストリッド・リンドグレーン 石井登志子・訳 イロン・ヴィークランド 岩波書店 1994年)


≪おばさんは、大きなライ麦パンにバターをぬってくれました。
ふたりがおいしそうに、パンをほおばり、おかゆを書き込むので、
今朝はまったくなんでもがおいしい天気だと、みんなにもよくわかりました。
「おかゆがいちばんおいしい食べ物だと思うけど、リサベットはそう思わない?」
マディケンがこう聞くと、リサベットは
「思わない。」
ときっぱりとみじかくこたえました。

……「そう、じゃ、いちばんすきなものはなにかしら。」
とおばさんが聞いてくれました。
リサベットはあれこれ考えて、
「グースベリー・クリームと……クリームと……ほかのクリーム。」
とこたえました。
するとカールソンさんたちは、またそろってわらいました。
「グースベリー・クリームに、クリームにほかのクリームではクリームだらけだね!」
と、おじさんがいったので、マディケンが説明しました。
リサベットのいうことがわかるのは、マディケンだけですから。
「グースベリー・クリーム、これはグースベリーのクリーム。
クリームというのはりんごのクリームのこと。
そしてほかのクリームというのはほかのくだもののはいったクリームのことです。」
トーレもわらって
「グースベリー・クリームに、クリームにほかのクリーム!
おもしろ荘ではクリームだけで暮らしているのかい?」
と聞きました。
「そんなことないの。アイスクリームも食べる
……5歳のおたんじょう日のときは、すきなだけ食べてもよかったのよ。5キロは食べたわ。」
と、リサベットは説明しました。≫


おもしろ荘に住むしっかりもののお姉ちゃんのマディケン、可愛い(だけじゃない)妹のリサベットの話です。
二人の話は、「マディケンとリサベット」【リンドグレーン 文 石井登志子・訳
ヴィークランド 絵 篠崎書林 1983年】というきれいな大型絵本で出ていました。
今は版が小さくなり、「雪の森のリサベット」(徳間書店 2003年)という書名で出ています。
また、「おもしろ荘の子どもたち」「川のほとりのおもしろ荘」【リンドグレーン 文
石井登志子・訳 ヴィークランド 絵 岩波書店】というたくさんお話の詰まった2冊の中でも、二人は大活躍です。

「おもしろ荘」の子どもたちにしても、「やかまし村」(12月13日紹介)の子どもたちにしても、
のびのびと自由に、子ども時代を謳歌しています。子どもがのびのびと自由にというのは当たり前ですけど。
贅沢な物はなく、今でいう刺激的な物もないけれど、遊びは尽きず、毎日、毎日が楽しみに満ちています。
そして、その子たちのそばには、それを暖かく見守る大人がいて……。

ところで、この「グースベリー・クリームと……クリームと……ほかのクリーム。」 
甘い物好きでも、少々、うぇっとなります。
あの人たち(いわゆる西洋人)は、食べる量も多いですよね。
最後に何か、日本でいうあられやおせんべいのような塩辛いもので、口直ししないんだろうか?
そう思っていたら、チーズで「〆」にする人もいるというから、
うーん、日本のお菓子文化の奥の深さを感じるとともに、だから、太るんや! と思います。

この夏、オーストラリアのとある大都市に行ったのですが、
行き交うお嬢さんたちがほとんどと言っていいくらいファットでした。
チーズ文化のおかげか?
日本に帰ってきたら、日本のお嬢さんたちの、なんと、スリムなこと!
先進諸国の中でも、有数にお嬢さんたちがスリムな国だと思います。
でも、みんな太ること気にしてるけど……。

cover ●同じ画家の関連本●
雪の森のリサベット
アストリッド・リンドグレーン文
石井登志子・訳
イロン・ヴィークランド絵
¥1785

町へクリスマスの買い物に出かけた幼いリサベット。
いたずら心で知らないおじさんのそりのうしろに乗ってしまい、あげくに森の中に置き去りにされて…!?
不安と闘いながら家に帰ろうとがんばる小さな子どもの気持ちを描いた、心あたたまるお話。

出版社: 徳間書店(2003年)
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12月20日

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cover 「ファーザー・クリスマスーーサンタ・クロースからの手紙」
(J.R.R.トールキン文・絵 ベイリー・トールキン編 瀬田貞二・田中明子訳 評論社 2006年/1979年)


【§「1926年12月20日より】
≪北極柱そば 世界のてっぺん 崖屋敷 愛する子どもたちへ
今年は、いつもよりもっと手がふるえる。これも北極グマのせいだ!
世にたぐいなく大きなドッカーンだった。それに今までにためしなく大きな花火だったよ。
おかげで北極柱はまっくろ。星という星はゆすぶられて位置がずれてしまう。
月は四つに割れ、月の男がうちの裏庭に落っこちてきおった。
そしてかれは、わしのクリスマス用チョコレートを山のようにたいらげたあげく、
やっとひとごこちついたといって、空に戻っていった。月の修理をし、星の位置をちゃんと直すのだと。

それから、わしは、トナカイたちが逃げ出しているのに気がついた。
こやつらときたら、やたらそこらじゅうかけまわって、たづなは切る、
ロープは切る、プレゼントは空中に投げ散らすというありさま。
いつでも出発ができるように、全部積みこんであったのに。
そう、ほんのけさの出来事だ。チョコレート菓子がそりいっぱい積んであった。
チョコレートは、イギリスには、いつも早めに送るようにしてるんだ。
あんた方のところに、ひどくいたんだのがとどかなきゃいいが。……≫


作者の子どもたちに届いたサンタクロースからの手紙を
サンタクロース自らが描いた絵とともに、1冊にまとめた本です。
そりいっぱいに積み込んだチョコレート菓子。
サンタクロース自らのクリスマス用チョコレート。サンタクロース自身も、チョコレートが好きだったんだ!

イギリスでもスイスでも、ケーキ屋さんみたいな店構えでチョコレート屋さんというのが、ありました。
日本でも最近は、ベルギーチョコの一個売りみたいなチョコレート屋さんを見かけますが、
どうも取り澄ました感じがします。
イギリスのチョコレート屋さんは、あくまでも素朴で、大雑把な感じです。
チョコレートが、わさーっと盛ってあったり、大きめの塊が積んであったり、
他の甘いものも置いているけど、ケーキ類は、そこにはないのです。
パリには、ケーキ屋さんがたくさんあり困ったのですが、
イギリスには、おいしそう! とウィンドーをのぞかせるようなケーキ屋さんは少ないような……。

私が住んでいる近隣の城下町で、和菓子を選ぶのに、一苦労するような町があります。
というのは、小さな町なのに、ちょっと歩けば、和菓子屋さんに当たるからです。
特に、秋は、名産の栗おはぎ、栗餅、栗きんとん……むむむ。が、その町に、
大量生産の工場で作るケーキ以外のケーキ屋さんを見つけられません。
京都の錦市場を歩けば、どのお漬物にしようか、困るくらいだし、
私の生まれ育った神戸では、あのパンはここ、このタイプのパンはここ、などと贅沢なものです。
食べ物だけみても、町の顔がありますね。

ところで、ロンドンの地下鉄の構内の自動販売機は、今も飲料水ではなくて、チョコバーです。
小腹のすいた、スニーカー履きスーツ姿のキャリアウーマン風の女の人が食べていると、
なーんか かっこいい。
ファージョンの「ムギと王さま」(石井桃子・訳 アーディゾーニ絵 岩波書店)の中に
「十円ぶん」っていう、お話がありますが、そのチョコのお話です。



12月19日

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cover 「パディントンのクリスマス」
(マイケル・ボンド 文 松岡享子訳 ペギー・フォートナム画 福音館書店 1968年)


【Y パディントンとクリスマスの買物】
≪……クリスマス前のニ、三週間は、バードさんにとって、忙しいのが普通でした。
ミンスパイだのプディングだのケーキだの、つくらなければならないものが山ほどあって、
バードさんは、一日の大半を、台所で過ごしていました。……≫


ロンドンのパディントン駅がご縁でブラウン家の家族になったくまのパディントンの話です。
クマには、毎年2回―夏に一回とクリスマスに一回――お誕生日があるそうで、
クリスマスは、本当にお忙しいのでしょう。
パディントンのご友人は、パディントン駅から、そう遠くないポートベロー・マーケット
(ノッティンヒル)でストールを持つグルーバーさんです。
ポートベロー・マーケットは、普段は市場だけのようですが、
土曜は、大きなアンティークマーケットとして有名です。(映画「ノッティンヒルの恋人」に移り変わる四季とともに映っています。)

アンティークは、買うのも楽しいでしょうが、見る楽しみ、冷やかす楽しみも大きな魅力です。
ロンドンのアンティークマーケットは地方に比べ、値が高いように思います。
が、見るだけなら、このポートベロー・マーケットでも面白い。
イギリス人は、物を捨てないの? と思うくらい何でも売っています。

古びた釘や鍵、お菓子のおまけ、日本じゃ、とっくに廃棄されていそうな物たち。
だけど、楽しいのは、物じゃなく、そのストールのおじいさんの様子。
鼻歌交じりで、銀器を磨いているおじいさん。
ちょっとよさそうなものを客が指差して「いくら?」と聞いても、売る気のなさそうなお返事。
多分、自分のご自慢が売れるのがいやなんだぁ!
客が品定めしていても声をかけることもなく、隣のストールのおっちゃんと今日の情報をコーヒー飲みながら、
喋っている。売る気がないんや!
(と、いつも私は、朝一番に行くので、こんな様子です。超満員だといわれる頃に行ったら、ちょっと様子も違うかもしれません。)

今も印象に残っているのは、ウィンチェスターで、たまたまやっていたアンティークフェアのチケット
販売の可愛いおじいさんです。入場料を払うときに、チャーミングにウィンクしてくれたのです!
「いいものあるから、よーく見てよ」って。後にも先にも、異性にウィンクされたのは、これが初めて。
はい、小さな銀のティースプーン買っちゃいましたよ。



12月18日

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「クリスマス人形のねがい」
ルーマー・ゴッデン文 掛川恭子・訳 バーバラ・クーニー絵(岩波書店 2001年)


≪……「あたしのさがしているのは、ツリーが立っていて、子どものいない家だからね。」
ホリーは前にそういいました。

さて、その家の前に立って、窓からのぞきこんでみましたが、
いくらさがしてもこどものすがたは、見当たりませんでしたし、
クリスマスツリーのほうは、キャンドルに火までついて、ちゃんと飾ってあります。
暖炉で火がもえているのも見えます。
「あたしをあっためてくれるための、暖炉だ。」
アイビーは小さな声でいいました。

それにしても、なんて寒いのでしょう!
テーブルには、白地にピンクの縞模様のテーブルクロスがかけてあって、
その上に、青い模様のお皿やカップ、パンにバター、はちみつにミルク、あついお茶がならんでいます。
「あたしの朝ごはんだ。」
アイビーは聞こえないような声でいいました。

それにしても、なんておなかがすいたのでしょう!
きれいなエプロンをかけたジョーンズさんのおくさんが暖炉のそばにすわって、
ご主人の帰りを待っているのが見えました。
アイビーはじっと立ちつくしていましたが、やがて「あたしのおばあちゃん」とつぶやきました。……≫


ルーマー・ゴッデンのお話にバーバラ・クーニーが絵を描いた、とてもきれいな絵本です。
この引用文の箇所の絵に描かれているのは、こじんまりとしたツリーの置かれた出窓の
向こうからのぞいているアイビーと、テーブルの上のお茶セット、パン、バター・ハチミツなどです。
家庭の温かさの象徴としてのテーブルセットです。
質素ながらも、そこにあるぬくもりと甘い味。
白地にピンクの縞模様のテーブルクロスも優しさを表現しています。

青い模様のお皿やカップは、イギリスでよく見るタイプのお茶セットです。
ちょっと東洋っぽい感じのするのが、お好みなのか、アンティークショップでもよく見かけます。
デンマークのロイヤルコペンハーゲンも白地に青い模様ですが、
あれほど、薄く繊細な感じではなく、もっと生活感のある陶器です。

文中には、ジャムが出てきませんが、イギリスのパン食には、ジャムがほとんど、必ずついています。
以前、寡婦のおばあちゃんが一人で切り盛りしているB&B(と、言っても、2室のみ)に泊まったとき、
そのおばあちゃんが、胸を張って、「こちらは、私がつくりましたのよ」と
勧めてくれた手作りマーマレードのおいしかったこと!
それ以前に、ロンドンのボーイが車のドアを開けてくれるようなホテルに泊まったときにも、
銀器に入ったマーマレードを食べたことがあります。
それも、「おいしい!」というと、そばにいた給仕の人が、胸をはって「手作りですから」といいました。
手作りというのは、胸を張って言えるものなのですね。
毎年、友人が作ってくれるおいしいマーマレードも、胸を張って、ここに書けます
(と、私が作っているわけじゃないのに……)。)



12月17日

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「スクルッル谷のニッセ」
(オーヴェ・ロスバック文 山内清子・訳 シェル・E・ミットゥン絵  金の星社 1996年)


【第6章:クリームがゆ】
≪……“コーヒーわかして スープを作って 朝ごはんに おかゆを煮て
ソーセージつめて ブラッドソーセージも 用意して コーヒー豆ひいて

ああ いそがしい いしがしい クリスマス・イブまで あといく日
靴下をつくろって 耳に栓して よけいなことを 聞かないで
手袋あんで 洗濯して ドアの穴に パテつめて
ああ いそがしい いそがしい クリスマス・イブまで あといく日

 ”「かあさん、今夜は、いやにごきげんだね」
アネシュはふしぎがった。
アネシュとポールは乾燥パンと、あぶら身たっぷりのハムにお酢とマヨネーズとこしょうをつけて食べていた。
“そうよ ヒバリみたいに 心がはずむ 今夜は なんでも うまくいく”
「でも、鍋で、なに煮てるの?」
“クリームがゆさ おいしくできる”……≫


あぶら身たっぷりのハムにお酢とマヨネーズとこしょうをつける?
そんな食べ方したことないけど、お酢好きの私としては、イメージできますねぇ。
これなら、あぶら身のこってりさが緩和されて、食が進むかも……。
が、日本のハムのイメージからすると、何かつけないと食べられないハムは考えられない。
日本は、塩やなんやかや添加しないと、日持ちしないからだろうけど、
あとからコショウまでつけるのは、よっぽどではないだろうか。ふーむ。
料理では、かの悪名高きイギリスですら、
朝食べるベーコンだけは(別に朝でなくてもいいけど)、どれもおいしいような。
だけど、ブラッドソーセージ(血入りソーセージ)は、いまだちょっと怖い。
国によって、真っ黒だったり、赤めだったりするようですが……。
今度出てきたら、頑張ってみます。

ところで、このニッセに「おかゆ」を提供する話は、スウェーデンでは、トムテに「おかゆ」の話になります。
ニッセがノルウェー、デンマークなら、スウェーデンでは、家の見回りをしてくれるのはトムテです。
そんなトムテがでてくる絵本が、「きつねとトムテ」
【フォーシュルンド゙詩 やまうちきよこ・訳 ウィーベリ絵 偕成社 1981年】です。
トムテが、狡猾なキツネに 「クリスマスのおかゆだ。おいしいよ。たっぷり おあがり。」
と差し出すと、キツネは……。



12月16日

「クリスマスまであと 九日ーセシのポサダの日」
(アウトラ・ラバスティダ゙文 田辺五十鈴・訳 マリー・ホール・エッツ絵 冨山房 1974年)


 ≪……おかあさんと マリアとは、あさはやくから、おいしいプディングを つくっていました。
とうもろこしのこなに ほしぶどうを入れて、それをとうもろこしのかわで つつんで ふかすのです。
……マリアが、あのピニャタを だいどころに もってきて、ふたつのいすの あいだに ぶらさげました。
その中に、セシは、いろいろなものを 一人で ぜんぶ、つめました。
大きな しるたっぷりの オレンジ、小さな おいしいレモン、それにピーナッツや、
きれいなかみに つつんだ キャンデー、赤と白にそめた さとうきびなどです。……≫


メキシコのクリスマスのお話です。
クリスマス前の9日間、毎晩違う場所で行う特別のパーティのことを“ポサダ”といいます。
ピニャタという粘土のつぼの中に入れた張子をつるし、
つぼの中には、お菓子をつめ、みんなでつぼを割って祝う風習があるようです。

とうもろこしの粉に干しブドウを入れたプディングって、黄色い蒸しパンみたいなもの?
とうもろこしの皮を捨てないで、その皮で蒸すのは、昔からの知恵ですね。
日本なら、竹の皮で蒸す、栗蒸し羊羹がおいしい!
しるたっぷり! のオレンジ……、おいしそう。
小さな「おいしい」レモン? うーむ、レモンは、すっぱいというイメージだけで
「おいしい」というからには、日本で手に入るレモンとは違うの?
赤と白に染めたサトウキビ。それって、おしゃれで、おめでたい感じはするけど、
食べたら、口が真っ赤ってこと? うーむ、むむむ?????

ともあれ、主人公セシの可愛いこと。
クリスマス(ポサダ)に関係のないようなエピソードも織り込まれていますが、
実はその一つ一つが、セシの優しさを表現するために必要で、
最後のシーンに至るまでの大事な道筋なのだと思います。

ところで、20歳の娘は言います。
「この絵本、読んでもらった頃、セシみたいに、赤ちゃんが欲しかったんよねぇ。
サンタクロースに弟ください。って、願ってたなぁ。」

ちなみに、20歳の娘は3人兄姉の末っ子。
この娘は、ちょうど、この頃「しもべのラース」という言葉が気に入っていて、
言いなりになる「しもべ」に憧れていたのです(?)。
【「しもべのラース」バージニア=ハビランド 木村由利子・訳 松村太三郎・画 学校図書 1983年 世界のむかし話Bスウェーデン】

cover ●同じ画家の関連本●
もりのなか
マリー・ホール・エッツ 著
まさきるりこ 訳
¥945

紙のぼうしをかぶり、おもちゃのラッパをもったぼくは、森で動物たちといっしょにあそびます…。
そして…。
有名すぎるほど有名な絵本ですが、読み返すたび新鮮な印象を届けてくれます。

出版社: 福音館書店(1963年)
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12月15日

「クリスマスのおきゃくさま」
(ダイアナ・ヘンドリー文 ふじいみきこ・訳 ジョン・ロレンス絵  徳間書店 1994年)


≪……いよいよクリスマスの朝になりました。
まずリリールーをながしから出しました。
おかあさんとジェインとジョージおじいちゃんが、山のようなじゃがいものかわをむいて、ゆでました。
さあ、クリスマスのごちそうのよういができました。
五人のおばさんたちがもってきたシチメンチョウのお肉に、
ファニーおばあちゃんが作ったコケモモ・ソースをかけて食べました。
アニーのもってきたクリスマス・プディングも食べました。
みんな、リリーさんが作った紙のぼうしをかぶりました。
でもエイモスだけはあたまにもうふをぐるぐるまいていました。
こうするほうが楽しいのです。
車の子どもたちがもってきたクラッカーも、にぎやかにならしました。
ごちそうのあと、みんなはだんろのまわりに集まりました。
デザートはバーソロミューおじさんのおみやげ、オーストラリアのおかしです。
口に入れると、まるでおひさまを食べたみたいに、ぽかぽかしてきました。……≫


とっても愉快な絵本です。
次々、お客様が来て、お風呂場にも食器棚にも、暖炉の上にも、泊まってもらうことになるのです。

ところで、コケモモ・ソースって、脂っこいお肉にかけると甘酸っぱくて、あっさり食べられるようですね。
引用した文のページの絵では、多分、牧師さんのおくさんがコケモモ・ソースを配って歩いていますね。
リリーさんは、リリールーちゃんにミルクをあげています。
この家のおかあさんは、クリスマス・プディングを切り分けようとしています。
隣では、クリスマス・パイを食べる子が……ジョージおじいちゃんはシチメンチョウを切り分けています。
アンガスおじいちゃんとファニーおばちゃんはテーブルの向こう側で、乾杯しています。
ジニーおばあちゃんの連れてきた3匹の猫と新しく加わった猫もあちこちでお相伴にあずかっています。

絵本は、こうやって、文章にないお楽しみを見つけられるから大好きです。

ちなみにこの本、「ベンとジェインの家は、エクセター通りにあります。」
(原題は、CHRISTMAS IN EXETER STREEET)という文章から始まるのですが、
ロンドンのエクセター通りは、本当に街のど真ん中にあります。
イギリス中で30近くのエクセター通りがあるようですから、
子どもたちは、自分の家の近くのエクセター通りをそれぞれ思い描くのかもしれません。

cover ●同じ画家の関連本●
クリスマスの幽霊
ロバート・ウェストール 著
ジョン・ロレンス 絵
坂崎麻子・光野多惠子 訳
¥1260

1930年代のイギリスの小さな町を舞台に、男の子の冒険と、父と息子の絆を描きます。
これもイギリスの労働者階級のいいお話。心に残るクリスマスの物語です。
作者ウェストール自身による、子ども時代の回想記を併録。

出版社: 徳間書店(2005年)
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12月14日

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「たのしい川べ」
(ケネス・グレーアム作 石井桃子訳 アーネスト・シェパード 1963年 岩波書店)
【第5章 なつかしのわが家】
≪……ネズミ君、と、モグラは、悲しそうにいいました。 「きみの夕ごはんをどうしようね。ひえきって、つかれて、おなかをへらしているきみの夕ごはんをさ。
ここには、なんにもないんだ―――ほんとになんにも―――パンのかけらさえないんだ。」
「どうしてきみは、なんでも、そうすぐ、あきらめてしまうんだろうな。」
と、ネズミは、しかるようにいいました。
「だって、ぼくは、たった今、お勝手ではっきり、イワシのかん切りを見たんだよ。
そうすれば、どこかそのそばにイワシのかんづめがあることぐらい、だれだってわかるじゃないか。
しっかりしたまえよ。元気をだして、ぼくといっしょに、たべものをさがそうよ。」

そこで、ふたりは出かけていって、戸だなという戸だなを全部あさりつくし、
ひきだしというひきだしも、全部ひっくりかえしてさがしました。
すると、もちろん、上等とはいえませんが、けっしてがっかりする必要もない結果
―――つまり、イワシのかんづめが一つと、乾パンが、ほとんど箱いっぱい、
それに銀紙に包んだドイツ・ソーセージが出てきたのです。……≫


このあと、野ネズミたちのキャロリングが回ってきて、みんなで一緒にパーティとなるのですが、
野ネズミが初々しくてとっても可愛いのです。
物語全体の進行は、流れの速いところ、ゆっくり流れるところ、
軽く流れるところ、深いところと、まるで、テムズ川の流れのようです。

作者はテムズ川近くに住み、このお話を書きました。
ロンドン辺りのテムズ川と違い、この辺りは、全体にゆったりとした空気が流れています。
ヘンリー・オン・テムズという川沿いの町に、川と舟遊び博物館(River & Rowing Museum)があって、
その中の一角に、「たのしい川べコーナー」があります。
お話の流れに沿ってカエルくんやモグラくんやネズくんの人形が飾られています。
現地のおじいちゃんやおばあちゃんが、「うぉほっほっほ」と指差しながら楽しんでいました。
その他の一般的な博物の展示にも、シェパードの描く、舟遊びをするモグラくんや
ネズくんの挿絵のカットが、説明の横に張られていて、心が和みます。
イギリス人の多くが知っている話で、なじみ深いからでしょう。

また、同じテムズ川沿いのクッカムという村(?)には、クッカムを愛した画家
スタンレー・スペンサー(Stanley Spencer)の美術館があるのですが、
その小さな小さな美術館(10人以上入れるのかしら?)の切符係り兼おみやげ係り兼監視係りのおばちゃんが言ってました。
「何故、日本人の見学が少ないんだい?」って。
サー・スタンレー・スペンサーっていうくらいだから。日本で知名度が低いだけで、本国ではサーをもらうくらいの人です。
ご興味があったら、一度、スタンレー・スペンサーをチェックしてみてください。
ほっとするような暖かい絵を描いています。
また、彼の描いたクッカムの風景は、ほぼそのままで残っています。
違いがあるとしたら、その頃より木が大きくなっているくらいです。



12月13日

「やかまし村の春・夏・秋・冬」
(リンドグレーン作 大塚勇三・訳 イロン・ヴィークランド絵 岩波書店 1965年)


【§2 やかまし村のクリスマス】
≪ほかのところではクリスマスがいつはじまるのか、わたしは、しりません。
でも、このやかまし村にクリスマスがやってくるのは、わたしたちがショウガ入りクッキーを焼く日なんです。
この日は、クリスマス・イブとおんなじくらい、たのしい日です。
ラッセとボッセとわたしとは、クッキー用のこね粉を、めいめい、たっぷり一山ずつもらい、
そのこね粉をつかって、すきなようにクッキーを焼けるのです。
ところで、どうでしょう。
……いよいよショウガ入りクッキーを焼くという、その当日、ラッセは、そのことをすっかりわすれ、
おとうさんにくっついて、森へたき木とりにいっちゃったんです!
でも、森のまんなかにいったとき、ラッセは、きょうがどんな日だったをおもいだし、家にかけてもどりました。
「いやはや、雪けむりをたてて、すっとんでいったっけ。」
と、おとうさんはいっていました。
そのころ、ボッセとわたしとは、もうクッキーを焼きはじめていました。
そして、ラッセがおくれてきてくれたのは、じつにうまい具合でした。……≫


何故、うまい具合なのかというと、ブタのかっこうをしたクッキーの型を
ボッセとリーサが、ラッセより先に使えるからでした。
同じリンドグレーンの作品で「ロッタちゃんとクリスマスツリー」【リンドグレーン作
やまむろしずか訳 イロン・ヴィークランド絵 偕成社 1979年】では、
ロッタちゃんは、ブタのバムセのぬいぐるみを、どこへ行くにもひきずって行きます。
スウェーデンでは、ブタ君が人気です。ブタは、幸運をもたらすといわれているようです。

やかまし村のシリーズは、絵本でも出ています。
【やかまし村のクリスマス リンドグレーン作 おざきよし・訳 イロン・ヴィークランド絵 ポプラ社 2003年】
そこには、リーサたちが粉まみれになってクッキーを作っている、楽しそうな絵が描かれています。
確かに、そのテーブルの上には、ブタのクッキー型が一つ。
出来上がっているのもブタのクッキー(絵本の訳では“しょうがビスケット”)。
窓のところにおいてあるのは、アドヴェントろうそく4本。
ちなみに、アドヴェントろうそくは、クリスマス前に毎週、一本ずつ増やしながら点火していくので、
第1週目のろうそくは、ずいぶん小さめです。

隣り合った3軒の家の子どもたちが、毎日愉快に過ごす、やかまし村のシリーズや絵本、
ドラマティックな展開もなく、大冒険でもなく、されど、子どものときってこんなことの連続! という話です。

*“ヨーロッパのクリスマスのクッキー”のお話が4日続きました。
ドイツのレップクーヘン、アルプスのクッキー、チェコのコイのクッキー、
それに、スウェーデンのブタのクッキー。これほどバラエティー豊かだと
“ヨーロッパのクリスマスのクッキー”と、ひとくくりにはできないですね。
おもしろいものですねぇ。

cover ●文中にも出てくる関連本●
ロッタちゃんとクリスマスツリー
アストリッド・リンドグレーン 著
イロン・ヴィークランド 絵
やまむろしずか・訳
¥1680

明日は楽しいクリスマスイブ。
でもロッタちゃんの家では、まだクリスマスツリーにするもみの木が手に入りません。
天候がよくなかったため、ツリーが手に入りにくいというのです。
泣き悲しむお兄ちゃんたちを残して、ロッタちゃんは雪の町に飛び出して行きます…。

出版社: 偕成社(79年)
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12月12日

「おじいちゃんとのクリスマス」
(リタ・テーンクヴィスト 大久保貞子・訳 マリット・テーンクヴィスト  冨山房 1995年)


≪…台所へ行くと、おじいさんはもう起きていて、クリスマス用のパンをこねていました。
「おやおや、トマス。朝早くから元気だね」おじいさんは、粉まみれの両手をひろげてうれしそうに言いました。
トマスはおじいさんといっしょに、コイの形をしたクッキーを作り始めました。
大きいのをひとつと、小さいのをたくさん。オーブンのなかでクッキーがこんがり焼けると、
「ひとつ、食べてごらん」と、おじいさんが言いました。
でもトマスは、おなかがすいていなかったので、食べませんでした。……≫


おばあちゃんを亡くしたばかりのおじいちゃんと優しい孫のトマス。
優しい雰囲気の絵とともに、心に大事なものを届けてくれる1冊です。

クリスマスのパン生地をこねているおじいちゃん。トマスと一緒に踊るおじいちゃん。
スープを飲むおじいちゃん。クリスマスツリーの前のおじいちゃん。
トマスのベッドにやってきたおじいちゃん。お顔が、だんだん柔和になっていきます。

チェコでは、クリスマスに魚のコイを食べる風習があるようです。
同じプラハで、同じコイをテーマにした読み物に「およげ ぼくのコイ」(ヤン・プロハズカ文 吉原高志・訳 フランク・ハーケン 絵 徳間書店)があります。

クリスマスツリーには、コイのかたちのクッキーや、星やハートや鳥なんかも見えます。
壁にはちゃんとヤドリギも。日本のお湯飲みみたいなカップでお茶を飲んでいるおじいちゃんの手には、クッキー。
テーブル代わりの椅子の上には、クッキーとキャンデー?
温かで豊かな時間が描かれています。
トマスのプレゼントしたおじいちゃんへの室内履き、ちょっとおしゃれです。

トマスの作った大きなコイのクッキー、どこから食べる?
鎌倉のハト●●●や、先日裁判になっていたヒヨコ●●●●●も、
貴女ならどこから食べますか? いつも、ちょっと悩みません?




cover ●関連のお薦め本 from 海ねこ●
おうしのアダムがおこりだすと
アストリッド・リンドグレーン 著
マーリット・テーンクヴィスト 絵
今井冬美・訳
¥1260

むかしむかしのイースターの日、大きなおうしのアダムがとつぜんおこってあばれだしました。
だれもこわくて近寄れません。
すると、小さな男の子カッレが近づいて何か話しかけると…。

出版社: 金の星社(97年)
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12月11日

「山のクリスマス」
(ルドウィヒ・ベーメルマンス作 光吉夏弥訳・編 岩波書店 1953年)


【§雲とはちみつのおかし】
≪クリスマスのおかしのつくりかたが見つかると、おばさんは、いいました。
「リーザール、まず第一に、あそこにある、あの大きな木のおわんと、大さじを、とってちょうだい。
ハンシは、食料べやへいって、はかりをもってきてちょうだい。
そのあいだは、口笛をふいているのよ。あんたは、もうたべすぎるくらい、
ほしリンゴをたべたんだから。そのおなかを、見てごらんなさいよ」

道具がそろうと、まず、大きな鉄板に、バタがぬられ、ねりこがめんぼうで、
ハンシの小指ぐらいのあつさに、のばされました。
それから、いよいよ、ほんとに、おもしろくなりだしたのは、ねりこが、
木や、人のかたちや、ウサギや、そのほか、ありとあらゆるもののかたちに、きりぬかれたときでした。
おばさんは、それを、鉄板の上にならべて、三十分くらい、かまどのなかにいれて、やきました。
まもなく、うちじゅうが、あなぐらから、やねうらまで、はちみつのおかしのにおいで、いっぱいになりました。
リーザールのほっぺたは、かまどのねつで、まっかでしたし、
はなは、おさとうのなかに、つっこんだので、まっ白でした。
手も、こなだらけなので、からだにつかないように、とおく、はなしていました。……≫


「げんきなマドレーヌ」「マドレーヌといぬ」(福音館書店)などの
作者ベーメルマンスが描く、アルプスのクリスマスです。
つまみ食いを防ぐために口笛を吹くとか、ほっぺが真っ赤で、鼻がまっ白、
粉だらけの手は、からだにつかないように……と、具体的に様子が描かれていて、その場が見えるよう。
しかも、うちじゅう、はちみつの匂いでいっぱいになったとあって、
好きな人にはたまらない。そうでない人にはうんざり?

ここでは、クッキーの型が、木の型(もみの木でしょうね)、人の型
(サンタクロースや子どもかな)、ウサギや、そのほか、ありとあらゆるもの……とあります。
そこで、昨日のドイツ情報続きなのですが、友人の暮らしていた15年ほど前は、
クッキーは、クリスマスだけに焼くものなのか、他の季節にはクッキー型というのが
売っていなくてビックリして、かえって感心した覚えがあったそうな……。
今は、どうなんだろう? 確かに、イギリスの友人でも、現在オーストラリアに在住している娘でも、
日本ほど、生活便利品のこまごまとしたものが多く売っているところはないねぇと、言います。
あっても、種類が少なかったり、粗雑であったり……。
イギリスの友人にも、娘にも、“こんなもの?”っていうようなものを
所望されて送ったり、持って行ったりしましたからね。
きっと、クッキーの型も安直なプラスチックなんかじゃなく、
木のしっかりした型のものや金属製の堅牢なものを代々受け継ぐのでしょうね。

京都の老舗のお菓子屋さんの壁にも、代々使い古した和菓子の木型がたくさん飾ってありました。
どれも、黒くなって、型の外側も角が取れていました。
いろんな形があって、見ているだけで楽しかった。

明日とあさって紹介するクッキーは、その国独特の型です。お楽しみに。




12月10日

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「ジェーンはまんなかさん」
(エレナー・エスティス作 渡辺茂男・訳 ルイス・スロボドキン絵 岩波少年文庫 1991年)


【§「サンタクロースからの手紙」より】
≪やっとクリスマス・イブになりました。
……シルビーとママは、夜中にサンタクロースがくるときに、
入りやすいように、木をかりこんでおくことにしました。
でも、いまはそのまえに、ツリーにさげる、かおりのいい、
サンタクロースのクッキーを、いそがしそうに焼いていました。
そのにおいの、なんといいこと!……≫


ツリーにさげる、かおりのいい、サンタクロースのクッキー
ーージンジャークッキー
(生姜クッキー。ドイツではレップクーヘン)ですね。
湿気の多い日本じゃ、クッキーを吊るしておくなんて考えにくいけれど、乾燥した気候のヨーロッパなら、大丈夫。
赤ちゃんの歯固めみたいに、硬いのです。
家庭によって、デコレーションもレシピも違うようですが、
ドイツのツリー飾り用のクッキーは、バターと卵を極力少なく、
ココナッツパウダーも少なくして、蜂蜜で練って作るそうです。
“生姜クッキー”というより、高橋健二さん訳するところの“こしょう菓子”といったほうがピッタリくるらしく、
材料にたくさんの香辛料が入るそうです。
レップクーヘン用の香辛料も売っているらしい(ドイツ・カールスルーエ在住経験のあるMさん、情報提供ありがとう!)。

いずれにしても、風邪の薬効もある胡椒や生姜(ジンジャー)のすりおろし入りクッキーを、
クリスマス時期に食するのは、先人の知恵のひとつでしょう。
一年中でいちばん昼が短い冬至のこの時期は、いちばん寒い時期に向かう頃。
風邪を引かないよう、健康で冬を乗り切りたいのは、誰しも願うことなのです。
日本でも、冬至のかぼちゃ(南瓜)や、ゆず風呂(柚子湯)に入る風習がありますよね。
冬場のビタミン補給にかぼちゃを食べて、冬を乗り切ろう!
ゆず風呂もいい香りで、ゆったりリラックスできますね。



12月9日

「とってもふしぎなクリスマス」
(ルース・ソーヤー 文 掛川恭子・訳 バーバラ・クーニー 絵 ほるぷ出版 1994年)


≪……おさらもおなべも、ほんのわずかですみました。
りょうりするのも、たべるのも、たくさんあったためしがなかったからです。
でも、おとうさんがおひゃくしょうのよそいきのくつをなおしたときには、
おいしいヤギのミルクが手にはいりました。
パンやのよそいきのくつをなおしたときには、カリカリのおいしい長いパンが食べられました。
にくやのくつをなおしたときには、シチューがでることもありました。
うどんやネギやかおりのいいやさいといっしょに、にくをにこんだおいしいシチューでした。……≫


この文章の次のページには、人参(野生の?)とネギとうどん(?)と肉とナイフとお鍋の絵があります。
その次は、お父さんが、3人のこどもたちにシチューを分けている絵です。
テーブルの上には、黒パンとチーズ。滴りそうなヤギのミルクです。
テーブルクロスはかかっていないながらも、子どもたちの満足そうな顔つきで、
テーブルが冷え冷えとしたものでないのがわかります。

うどんは、別の訳文でもうどんとなっていますが【「クリスマス物語集」中村妙子編/訳
(偕成社 1979年「シュニッツル・シュノッツル・シュヌーツル」】、ネギのことはニラと訳されています。
でも、クーニーの絵を見ると、ニラというよりは明らかにネギです。
とはいえ、このネギは、鍋のお供の白ネギでもなく、京都の九条ネギでもなく、
下仁田ネギでもなく、リークといわれる西洋ネギのように見えます。

イギリスの家庭料理にリーク&ポテトスープがあります。
初めて食べたのは、どこか田舎の教会で、ボランティアのおばちゃんが作っている、それでした。
おいしい! それに、リーズナブル。
次に食べたのも、どこか田舎の小さな博物館にひっついてる馬小屋みたいな食堂のそれ。
おいしかった!
その次は、テムズ川沿いの村の小さな何でも屋さんのそれ。
おいしかったから、次の日も行ったのです。
大味で、ざく切りのイギリス料理の中で、このスープは(他のヨーロッパでもあるんだろうけど)おいしいよ。
細かい味や香りを気にしないなら、日本の下仁田ネギや、たまねぎでも似たようなスープが楽しめます。
が、あの馬小屋みたいな寒々しいとこで食べるのがいいのかなぁ。

蛇足ながら、大体、教会や村の記念物みたいな建物に敷設している家庭料理は、
パンでもスープでも、おいしいし、安いと思います。
おばちゃんたちの力作だからね。
日本でも、名所の近所にいるおばちゃんが作ったお餅とか、おぜんざいって、おいしいじゃないですか。




cover ●関連のお薦め本 from 海ねこ●
ちいさなもみのき
マーガレット・ワイズ・ブラウン 著
バーバラ・クーニー 絵
上条由美子・訳
¥ 1155

バーバラ・クーニーには、こんなクリスマス絵本も。
森のはずれに育った小さなもみの木が、ある冬の日、足の悪い男の子のもとへ運ばれます。
もみの木と男の子との出会いと心のふれあいを描いています。

出版社: 福音館書店(93年)
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12月8日

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「チャールズのおはなし」
(ルース・エインズワース 作 上條由美子・訳
菊池恭子・絵 福音館書店 2000年)


【§「クリスマス」より】
≪……「こんなすてきな長靴下って、はじめてだ!
せかいじゅうでいちばんいい長靴下だ!」
チャールズは気をつけて、ひとつずつ、プレゼントをとりだしながらいいました。
たべられるものはあるかな? ありました。ピンクのリンゴがひとつ。
なにか鳴らしてあそぶものはあるかな? 小さなハーモニカがひとつ。
なにかもってあそぶものはあるかな? ビー玉がいくつもありました。
それから、紙につつんだ、とくべつなプレゼントがひとつ。
それは、チャールズの小指ほどもない、小さな毛糸のぬいぐるみのくまでした。
うわぎにとめることができるように、くまの背なかにあんぜんピンがついていました。……≫


確かに! 素敵な長靴下です。チャールズの欲しかったものや、驚きが入っていたのですから。
子どもの喜ぶ顔を思い浮かべながら、サンタクロースは、プレゼントを用意すると思います。
この子が、日頃、どんな食べ物が好きで、どんな遊びが好きで、どんなものに興味を持っているか。
サンタクロースは、よく子どもを見ています。
ピンクのリンゴなんて、素敵じゃないですか。やさしい色で、酸っぱくなさそうです。
いろいろ、たくさん入っているから楽しい。

ドイツの幼稚園に通ったAちゃんが、幼稚園に持っていき、ぶらさげていた靴下には、
リンゴやコマ、先生手作りのちっちゃいノートが入っていたらしいです。
あんまりお金をかけなくても、子どもたちに「こころ」を贈っているのですね。
Hくんが小学2年生だったとき、サンタクロースが本物のドラムセットを持ってきました。
クリスマスのその晩に、枕元に届いたドラムセット。
サンタクロースは、ドラムセットを運び入れるとき、その家の
お母さんの手も借りたんじゃないかと、思えるほど立派なものでした。
日頃は、物静かで、やんちゃとは程遠いその坊やがたたいてみたいと思っていた打楽器の本物。
サンタクロースも、わくわくしながら、運び入れたと思います。何しろ、物が大きい。しかも楽器。

サンタクロースは、あげるだけの人ではなく、もらう人でもあるのです。
プレゼントを選ぶときのワクワク感、枕元に置くときのハラハラ感。
第一声が聞こえたときのドキドキ感。サンタクロースであってよかったと思う一瞬。
その一瞬は、サンタクロースを励まし、明日へのエネルギーを生み出す源となるでしょう。
サンタクロースが、毎年世界中の子どもたちに、プレゼントを運び続けるのは、こういうわけです。
愛と思いやりが行き交うクリスマス。



12月7日

「飛ぶ教室」
(エーリッヒ・ケストナー文 高橋健二・訳
ワルター・トリアー絵 岩波書店 1962年)


≪愛するマルチン!……
マルチン、どこかのコーヒー店でチョコレートを沸かしてもらい、お菓子を三、四個買いなさい。
学校や自分の部屋にばかりいないようにしなさい。
わかったかい?……おまえの愛する母から……≫
≪愛するやさしいおかあさん!
まずぼくはお察しのとおり、胸をつかれました。
でも、どうにも変えられないことですから、しかたありません。
ぼくは少しも泣きませんでした。ただの一滴も。
それをおかあさんにも、おとうさんにも約束します。
お菓子とチョコレートはパン屋のシェルフさんのとこで買います。
あそこはひどく安い、と、マチアスがいいます。
……おふたりの男らしいマルチンから≫


ケストナーのこの話は、一人で静かに読みたい本です。
ディケンズの「クリスマス・キャロル」を読まないと、クリスマスにならないと思っている、
あるいは、かつて思っていた人を知っていますが、私は、この「飛ぶ教室」もクリスマスに欠かせません。

子どもが小さい頃、私自身が読書する時間なんてほとんどなく、
子どもと一緒に読める絵本や児童文学が、私の読書の中心、いえ、すべてだった時期があります。
そんな頃、たまに、私が一人で新聞を読んだりしていると、
「お母さん、暇そう」と映るのか、なにか、要求したり、甘えてきたりしたものでした。

が、一度、この『飛ぶ教室』を読んでいるとき、特に後半、私は、子どもから隠れ、
一人で、屋根裏部屋に逃げ込みました。
お母さんも、たまには、一人で泣いてみたかったのです。

さて、クリスマスに家族に会えない子どもが、ふーふー言いながら、
カップで手を温めながら飲むチョコレートは、おなかも心も温まります。
クリスマスに子に会えない親にとっては、ふーふー言いながら、
カップで手を温めながら飲んでいる子を思い描くだけで、少し心が安らぎます。



12月6日

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「ゆきとトナカイのうた」
ボディル・ハグブリング゙作・絵 山内清子訳 ポプラ社 2001年(福武書店 1990年)


≪……きょう とうさんが トナカイを 一とう つぶしました。
にくは もちろん、かわも ないぞうも だいじです。
すてるところなんか ありません。
すねのかわを はぎながら とうさんが いいました。
「これで マリット・インガのくつができるね」
あたしは とうさんから かわをうけとって、
うすくけずった 木を うらに はりつけて かわかします。
うらうちを しておくと かわが まるまらないのです。
かあさんは ちょうを よくあらって、中に レバーや ちを つめて、ソーセージをつくります。
いろいろなソーセージができました。
なかみによって、それぞれちがうなまえが ついています。
トナカイのかわが すっかり かわくと、
うらうちをはがして、ゆでておいた しらかばのかわで
うらを ぎゅうぎゅうこすります。
あたしが いっしょうけんめい こすっていると、
だんだん やわらかくなって、とてもしなやかな かわが できあがります。
四ほんのすねの かわをつかって、くつが 一そくできるのです。
かあさんは ふゆのあいだに ぜんぶで十二そく つくるつもりです。
かあさんは、まいばん よるおそくまでかかって、とうさんのズボンや
あたしのタイツを、トナカイのけがわで ぬってくれます。

いっしゅうかんに いちど、かあさんは ストーブの火を
がんがんたいて、おいしいライむぎパンをやいてくれます。
うちの中は、あたたかくて、あたしは いいにおいに つつまれて ねむくなりました≫


ラップランドのクリスマスシーズンの絵本です。
私は、この絵本を見るまで、サーメたちの暮らしのことはほとんど知りませんでしたし、
トナカイがこんなに生活の重要な位置づけにあると知りませんでした。
トナカイといえば、♪まっかなおはなの…♪の、
サンタクロースとともにいるトナカイくらいしか思い浮かばなかったのですから。
このきれいな絵本を見ると、ラップランドの暮らしが、手に取るようにわかります。

きれいな衣装を今もふだん着ている様子が、先日のテレビで放映されていて、ちょっと嬉しかったです。
一緒に、この番組を見ていた20歳の娘も、
「あの絵本のあのページと一緒や」
といいながら、トナカイの牧場で、カウボーイさながらに、
トナカイの耳に印を入れるシーンを見ていました。
欧米のクリスマスのごちそうや、貧しいけれど心の温かくなる食べ物とは、一味もふた味も違う、
厳しい環境の中で「生き抜く」というエッセンスの詰まった食事風景です。

なお、「ラップランドのサンタクロース図鑑」(ペッカ・ヴォリ作 迫村裕子訳
文渓堂 2004年)も、とてもきれいで愉快な絵本です。
これは、ラップランドの秘密の場所にあるサンタクロースの国、
コルヴァトゥントゥリの芸術家トントゥ・ヴィルップ親方が
サンタクロース1500歳のお誕生日に間に合うように作ったというものです。



12月5日

cover 「農場にくらして」
(アリソン・アトリー作 上條由美子・松野正子訳
C.F.Tunnicliff 絵 岩波少年文庫 2000年)


【§「クリスマスの日」より】
≪……アイシングでおおい、赤や青のあられ砂糖をちりばめ、
まんなかに紙の旗を立てたクリスマス・ケーキがありました。
旗の片面はユニオンジャック、反対側にはサーカスでみたような、
とんがり帽をかぶった赤鼻の道化が描いてありました。
いい香りのするハムもありました。
台所の隅に掛けてあるハムの仲間で、煙で燻製にして絶妙な風味をつけ、
外側の固い皮を取って茶色のパン粉をまぶしてありました。
飾りの紙のフリルは、前の晩にスーザンが切ったものでした。
子牛の肉を詰めたパイ、ハムエッグ、陶器のお皿に盛られた、
てっぺんにバターをのせた肉のペースト、
背の高い持ち手の周りに頑丈な卵カップが八つと丸くそったスプーンが八本ついた
お城のような銀の卵立てに立てた茶色のゆで卵、
ちっちゃな緑の葉っぱと金色の縁取りのあるミントンのお皿にのせたバターつきの白パン、
ハチミツとイチゴジャムの瓶、産後間もない牝牛の乳で作った金色の凝乳に
小粒の干しブドウを混ぜて詰めた小さなタルトがのった古いスタフォードシャー焼きのお皿もありました。

テーブルの一方の端には、ミセス・ガーランドのおばあさんの物だった白と緑の陶器のカップが並び、
その横に、小さい脚が四つついた大きなティーポットと、
クリスマスなので、茶色いデメララ糖ではなく、水晶のようにすきとおった本当の角砂糖の入っている蓋つきの砂糖壺と、
それに合わせた牛乳入れ、なかなか流れ出ないほど濃いクリームの入った
クイーン・アン様式の古びた銀のクリーム注ぎがありました。
テーブルの中央には……≫


引用が長くなりましたが、まるでテーブルセッティングまで目に見えるようです。
ミントンのお皿や古いスタフォードシャー焼き(たぶん、ウェッジウッド)のお皿、
それにおばあさんのものだった白と緑の陶器、小さい脚つきのティーポット、
クィーン・アン様式の古びた銀のクリーム注ぎ……アンティークファンならずとも、このお茶道具に興味があります。

お茶といえば、アフタヌーンティが有名ですね。
ロンドンの真ん中、車のドアを開けるドアマンが居るようなホテルに
(あの通りに面したリ●●ではありません)、
女王と亡くなられた皇太后のお写真が貼ってありました。
バッキンガム宮殿に程近く、“もしかしたら彼女たちもお忍びで来たことがあるかも”
などと妄想を働かせておりましたが、初めてそこに泊まったときは、アフタヌーンティを取らずに帰国しました。
が、あそこに貼ってあった女王陛下がどうしても気になり、
ミーハーな私は、翌年、そのホテルのティルームに行きました。

きっかり、4時です。
物の本にあった「女王陛下は、ラプサンスーチョン・ティがお好き」という一節を思い出し(記憶違いかも)、
アフタヌーンティを注文するときに、ラプサンスーチョン・ティを注文。
ところが……それが、かなり個性的なお味!
はじめ、“女王陛下は、この個性的なお味がお好きなのね”などと、
すましておりましたが、どうも口に合いません。
小さなサンドウィッチ、おいしいスコーン、小さなケーキ。
一人で食べるには、充分の軽食です。
ところが、肝心の紅茶が口に合いません。ミルクをたっぷり入れてもだめ。
給仕の人が「もっとチョコレートをいかがですか?」と勧めてくれるのに、
紅茶でだんだん気分が悪くなっている私は、泣く泣く“NO,THANK YOU…”。
あとにもさきにも、チョコレートを残したのは、このときだけ。
もっと英語が堪能だったら「持って帰ります!」と“大阪のおばちゃん”できたのに……。うぇーん。



12月4日

「こびとの村のクリスマス」
(シャープトン・文 岸田今日子・訳 ミューラー・絵 文化出版局 1984年)


≪……まじゅつしのチビムーロンは おさけのようい。
クマツヅラのリキュールと、それにもちろん お日さまワインも。
日がくれると チュルルタンたちは、そりをひっぱって でかけるのさ。
たきぎやお日さまワインのビン、ほしブドウ入りのプチパンを いっぱいもって。
もみの木にランプをかざるための はしごもね。……≫


クマツヅラのリキュールかぁ……。
クマツヅラ(熊葛)について、調べてみましたよ。
広辞苑によると、【乾燥させて生薬とし、神経薬、腫れものに用いる。】
うーん、なんか、まずそう……。
で、今度は、「英米文学植物民族誌」(加藤憲市著・富山房1976)を見てみると、
「和名:クマツヅラの項§呪術とのゆかり」に、こんなこと書いてました。
【W.Coles:The Art of Simpling (1656)によれば、
新月の最初の夜明けに摘んだこの草の汁を飲めば、7年間は煩悩を断つことができるという。
サクソン時代の医術では、この草の粉末を酒に入れて、
Midsummer Dayに飲めば、肝臓病を予防されるとされていた。】

何を隠そう。私は下戸ではありません。
が、お酒もビールもほとんど飲みません。
何故なのか。苦い、辛い、甘くないからです。
お酒の好きな人に、「ケッ」と言われそうです。
が、この前飲んだ、アイルランドのベ●●ーズというクリームリキュールの甘いこと!
フレッシュクリーム、アイリッシュウィスキー、カカオ、バニラの香りの融合。
コーヒーに入れたり、アイスクリームにかけたり、ミルクで割ったりと箱に書かれています。
うふふのふ、です。
人生がほろ苦いだけに、甘いものがそばになくっちゃ……。
左党のあなた、今、「うぇー」って言ってませんか?




cover ●関連のお薦め本 from 海ねこ●
ゆきのひのおくりもの
ポール・フランソワ(Paul Francois)著
ゲルダ・ミューラー(Gerda Muller)絵
ふしみみさお 訳
¥ 998(税込)

雪の日に、こうさぎは、にんじんを2本見つけました。
1本だけ食べたこうさぎは
「こうまくんも食べものがなくてこまっているにちがいない。このにんじんを届けてあげよう」
と、こうまくんのうちにいそぎます。すると…。

出版社: パロル舎(2003/11)
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12月3日

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「ノエルカ」 マウゴジャタ・ムシェロヴィチ 文
田村和子・訳 マウゴジャタ・ムシェロヴィチ 絵 未知谷 2002年


≪……グジェゴシュはついに決心した。
ぶるっと武者震いして高級食料店のドアを押した。
階段を駆け上がるといい匂いのする明るく暖かい店内に入った。
棚にはありとあらゆる種類のチョコレートが並んでいる。
上流気取りのあちらの家族のためにエレガントなチョコレートを買おう。
非常に洗練されたチョコレートを。
それを堅苦しい一家の女王に渡す。いいきっかけになるだろう。
チョコレートを渡し、プチブル的な手にキスをし、
刺すような視線の集中攻撃を浴びながら“気をつけ”の姿勢のまま腰を下ろす。
そうだ、フランス製のチョコレート。それがいい。……≫


ポーランドのクリスマスイブのちょっといいお話です。
主人公はどこにでもいそうな17歳の女の子。
その子の周りの人たちの愛と思いやりの物語です。

高級食料店といえば、かつて、ロンドンの高級食料店から紅茶を直接買っていたことがありました。
友人と共同で購入して分け合っていたのです。
その縁から、毎年クリスマス前になると、すごく立派なカタログが届いていました。
そのカタログは、とてもきれいな写真集のようなカタログ。
紅茶はもちろんのこと、お酒やチョコレート、
果ては、婦人物のストールやクリスマスオーナメントなども掲載されていました。
カタログが届くたび、家族で「ひぇー」「わぁー」と、その豪華さと値の高さに、大騒ぎしたものでした。

で、チョコレートの話です。
カタログの中に、直径1メートル余くらいの円形の箱にびっしり
チョコレートが並んでいるクリスマス商品があるのです。
大体、そんなもの、この家のどこに置けましょう?
そのチョコがなくなるまで、食卓の上に置くわけにはいかないし……。
ま、パーティか何かのときにお使いになるのでしょうから、
1メートル余の円形の箱が邪魔という場所でもないでしょうけどね。
でも、小市民である我が家など、
「うーん、人気のあるチョコはどんどんなくなるけど、
これとか、これとかは、いつまでも残っていそうやねぇ……。
そしたら、いつまでも、1メートル余の円形の箱があるってわけ?」
と、要らぬ心配をしたものでした。

買わなくても、毎年送ってくれたあのカタログ。
その後、経営方針が変わって、日本向け個人輸入は打ち切りになったとか(たった一百貨店でのみ扱うって!)。
カタログも今年は届かなかった。
うーん、見ているだけで幸せになったのに……。




12月2日

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「ゆうびんやのくまさん」
(フィービ・ウォージントン&セルビ・ウォージントン作・絵 まさきるりこ・訳 福音館書店 1987年)


≪…それから、くまさんは、てがみや はがきや こづつみを はいたつにでかけました。
どこのいえでも、くまさんがいくと、とても よろこびます。
さっきのおにんぎょうの あてさきのいえに つくと、
こいぬが、くまさんを むかえに、かけだしてきました。
そのいえのおくさんが、くまさんに いいました。
「クリスマス おめでとう、ゆうびんやさん!
なかに はいって、クリスマス・パイと ジンジャー・エールを めしあがれ」……≫


きまじめな郵便屋のくまさんが描かれています。
クリスマスの勤務には、帽子のバッジに赤い実のついたヒイラギをつけて、おしゃれです。
くまさんがお人形を届けにいった、その家は、きっと暖房がきいていて、暖かなんでしょうね。
外は雪が積もっているのに、くまさんが飲んでいるのは、
あったかい飲み物じゃなく、ガラスコップに入ったジンジャーエール。
奥さんもワンピース一枚ですからね。
窓の外では、その家の男の子が雪だるまを作っているのが見えます。
壁には、すでに届いたカードを9枚並べて飾っています。
子犬も猫も、クリスマス・パイがほしいといわんばかり、お行儀よく待っています。

家に帰ったくまさんが、暖炉の前で食べるのは、クリスマス・パイ? と
サンドウィッチ(多分、イチゴジャム)とトマトとミルクティ?
ベッドのそばには、サンタさんのために、クリスマス・パイと飲み物。
「サンタさんへ どうぞ おのみください」と、書かれていますねぇ。

さて、このくまさんのシリーズは、福音館書店から他に4冊、出版されています。
「せきたんやのくまさん」「パンやのくまさん」「うえきやのくまさん」「ぼくじょうのくまさん」の4冊です。
どうもくまさんの就寝時間は、決まっているようですよ。
クリスマスは、ちょっと遅くなったみたいですけどね。




12月1日

「まぼろしの子どもたち」(ルーシー・ボストン・文 瀬田貞二・訳 堀内誠一・絵 偕成社文庫 1983年)
(「グリーン・ノウの子どもたち」亀井俊介・訳 ピーター・ボストン・絵 評論社 1979年)


≪……クリスマスの日を、そのあとどうすごしたかについて、こまかくお話しするまでもありません。
クリをつめたシチメンチョウ、干しブドウ入りの、こってりした、ふかしプディング、
それはトリーが火をつけて、パーシーがテーブルの青いわすれな草の花の輪かざりのなかにすえました。
それから、さとうづけのくだもの、さらにお茶のあとではクラッカー。
クラッカーは、おばあさまがひっぱると、パンとはじけて、白い紙のボンネットがでてきました。
その帽子をかぶると、おばあさまは、まえよりずっと絵の中のおばあさまそっくりになってきました。……≫


干しブドウ入りの、こってりした、ふかしプディング! これは食べたことがあります!
クリスマスプディング! 干しブドウだけじゃなく、いろんなドライフルーツが入っています。
が、あまーい、あまーい、あまーい。甘いもの好きの私もビックリ。
さとうづけのくだもの…で、好きなのは、友達の作ってくれる夏みかんの砂糖漬。
オレンジピールより、ほろ苦くて、日本の味!?
クリをつめたシチメンチョウ・・・うーん、残念ながらこれはまだ食べたことがない。
ちょっと調べたら、栗のほか、レーズンやたまねぎ、ハーブなど詰めるようですね。
友人がドイツに住んでいたとき、シチメンチョウじゃなく、ガチョウにリンゴの詰め物をして、
焼いたことがあるそうです。日本の家庭オーブンじゃ、なかなかそんな大物、焼けませんからね。
お料理自慢の彼女と、その家族は、わくわく、どきどき、焼けるのを待ちました。
が! 焼けて出てきたのは、足を縛り忘れたために、お行儀悪く足を開いた、ガチョウの丸焼きでした。

それにしても、青いわすれな草の花の輪かざりの中で、炎にゆらめくクリスマスプディング、
おしゃれです。トリーたちもブランデーをかけたのでしょうか。
パンとはじけて、白い紙のボンネットがでてくるクラッカーも、楽しい。

さて、さて、トリーのクラッカーからは、何がでてきたと思いますか?




cover ●関連のお薦め本 from 海ねこ●
メモリー ―ルーシー・M・ボストン自伝
ルーシー・M. ボストン(Lucy M. Boston)著
立花 美乃里、三保 みずえ 訳
¥ 2,940 (税込)
英国ファンタジー珠玉の名作「グリーン・ノウ物語」を生んだボストン夫人が綴る、あるがままの自分とは。
幼少期、青春、そして、物語の舞台となったマナーハウスとの出会い…。

単行本: 469ページ
出版社: 評論社 (2006/05)
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