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2003年7月の日記

こつこつ、いきます

夏、遠からじ、といった空気ですね。
いかがお過ごしでしょうか?

さて、私は6月29日、再び、
北尾トロさんのブックカフェへ。
前日に買った本をとりにいきました。
28日の日記で触れましたが、
あちこちで古本を買い込みすぎたので、
それ以上、持ち帰る自信がなく、取り置きしてもらったのです。

29日もまたまた、ネコの絵本・洋書「Hip Cat」ほか
古本3冊、購入。最終日も2割引きで、3冊で1960円。

トロさんのお言葉が耳に焼きついています。
「買うほうが多いでしょ、
(オンライン古本屋を始めて)最初は」
私「思いっきり、買ってばっかです」
トロさん「でも、趣味がよければ、
(買う人もあちこち探し回るより)そこに来るほうが
楽だから、(仕入れ値と売り上げが)逆転すると思うけど。
趣味がよければね」
私「(トロさんのHPに)リンクしていただきまして、
ありがとうございました」
トロさん「いや、こっちこそ。頑張ってください」

「はい」と小学生のように返事しつつ、
“今はあんなに勢いがあるトロさんでも、
本を買うほうが多かった時期もひょっとしたらあるのかな。
しかし。ふーむ、趣味がよければ…ですよね”
と、自分の店の趣味・方向性を思いました。

自分の趣味によさに自信をもてる人って、
いるのかな。いるとしたら、いいなーと思います。
私は、自分の趣味・嗜好でさえ
つかみきれない部分もあり、いまだ探っております。
人さまの好みがどうなのか、自分の好みが
人さまの好みと合うのかどうか、
察するまでの余裕はまだありません。
自分が好きな本を集め続けていけば、
きっと自分と似た好みの人も多少はいるだろう、
好みにあうと感じてくださる人も多少はいるだろう。
そう信じて、こつこつ続けていくしかありません。

開店したばかりの、某オンライン古本屋さんの
サイトをちらりとのぞかせてもらいました。
すごいなー、開店前に300冊、集めたそうです。
しかも、ジャンルの絞込み方、個性の打ち出し方がすごいです。
開店前から、アクセス数が激しく多く、
掲示板は、知り合いやファン(?)らの
熱気に満ちた盛り上がりぶり。

それにひきかえ、当店は、本当に地味。
本当にこじんまり。
あーあ、と思ったりもします。
しかし、ほかと比較してスネていても
発奮材料にでもしない限り、いいことはありません。
当店ならではのよさもあるのでは、と信じて
地道に続けていくしかありません。
他サイトと相互リンクさせていただき、
検索エンジンでも少しずつひっかかるようになりました。
イージーシーク以外で直接、お買い上げくださる
お客様がぽつりぽつりと来てくださいます。
今日、本をお買い上げくださった知人は
「中古というより、新古本ですね。
こう綺麗なの見ると、また欲しくなります」
と、大変、ありがたいお言葉。

最近、痛感しますが、海ねこは
私ひとりでやっているわけではないんですよね。
本を買ってくださるお客様、
店名のロゴやオリジナルしおりの
産みの親ー居ぬさん、ミワちん、
アドバイスしてくださる他サイトの諸先輩、
あれこれサポートしてくれる家人…
さまざまな方々に支えていただいています。
おかげ様で、どうにか続けていけそうな予感は
しております。しかし、まずは自分が頑張らなくてはね。

ところで、今さっき、NYで仕事をしている
友人にビデオテープと入浴剤を郵送しました。
あまり深く考えずに梱包して、
郵便局へ持っていき、送料を聞いてビックリ。
2390グラムと重さがかさんでしまったので、
航空便で5900円! SALで5000円!
EMSで4700円! 船便で2900円!
ふところ具合に余裕はないので、船便にしました。

船便は、とにかく時間がかかります。
以前、ハワイ島でしこたま本を買って、
船便で送ってもらいました。
本当に1か月以上たっぷりかかって、
忘れかけたころ、ようやく本が届いたのを思い出します。

送料がこれほどかかるとなると、
やはりNYは遠いな、と距離を実感します。
NYの紀伊國屋書店で、日本の本や雑誌が
かなり高い理由も改めてわかります。

送り終わってから、家人から教えてもらった
サイトを見て、もっとよく研究してから
送ればよかった、と気づきました。
2キロ以下にして「小型包装物」の扱いで送れば、
NYまでエコノミー航空(SAL)で2080円で済んだのです。
SALは、国内と到着国内では船便として扱い、
両国間は航空輸送するというもの。
船便より早く、航空便より安いサービスです。
ただし、最大2キロまでしか送れません。

今後、海外に本を送る機会が出てくる可能性が
あるかもしれないので、いい勉強になりました。

海外に物を送る場合、さまざまな方法があり、
また改正もしばしばなので、とても複雑です。
家人から教えてもらったサイトには、
海外に物を安く・速く送る方法などが
わかりやすく解説されています。
当サイトのリンクに加えておきますので、
必要にせまられたら、どうぞご参考になさってください。

2003年7月2日 記


孤独だけど、孤独じゃない

「仕入れ」と称して、
どんどん本を買ってくる私。
実は、今に始まったことではなく、
もともと、本を買うのが大好き。
洋服やアクセサリーにお金を使わなくても、
本や音楽、旅、交際費(酒?)食費(外食?)など、
自分の中身(?)への投資には、
お金を惜しまないことにしております
(浪費している言い訳?)。
「仕入れ」と言いながら、実は自分用の
本もかなり多いのですが、、、。
仕入れても、読みたい本があると、
読み終わってからいつか売ろうと思うまま、
どんどん本や雑誌がたまっていく一方です。

あんまりどんどん本を買ってくるせいか、
家人に命じられたのが
「古本 海ねこ」の事業計画を
提出せよ、とのお達し。
いや、できれば、仕入れのための資金を
出資して欲しくてお願いしたところ、
現在の収支明細や、いつになったら
黒字に転じそうかの見通しなど、
きちんと文書で提出せよ、とのことです。
きびしーい。(でも、ありがたい)

私はお金の計算など、とんと苦手。
やはり、経済面に強い人についてもらわないと
すぐさま破綻しそうなので、言うことを聞いて
計画書を作ってみましたよ。今さっき。

今のところ、売り物にしているのは、
仕事で使い終わった本や手持ちの蔵書も多く、
仕入れ値は、莫大というほどはかかっておりません。
おかげさまで、売り上げも少しずつですが上向き。
仕入れ値のトータルと売り上げのトータルは
ほぼ同じぐらいと考えてよさそうです。
今後は、もっともっと仕入れを増やしていきたいのですが、
基本的には売り上げの総額と同じぐらいの金額になるように
仕入れていけば、収支トントンになる計算ですね。
売り上げが伸びればその分、仕入れに回したいので、
純利益はまだ出ません。ま、そのうち出るといいなと夢見て。

問題は、初期投資費の回収です。
5月6月、古物商の申請のための諸費用、梱包材、
お名前コムのドメイン取得費用、HP転送サービスの
ための初期費用ほか。雑費もあわせるとバカになりません。
今後、これらをどう回収していくかが
海ねこの明暗を分けるのでは? と
いうシロウトなりの読みでおります。
甘すぎますでしょうか? そうでしょうね。

私は学生時代から、数学が苦手。
経営面・経済面は苦手なので、
経理担当・大蔵大臣関係は、
できたら家人にまかせたいところです。

私は、やりたいことを衝動的に思い浮かべる力
(やみくも、やりたい病?)や、
熟慮する前に行動する行動力(向こう見ず・無謀ともいう)
はあるほうかもしれません。
しかし、やりたいことを形にするための能力において
欠けている部分があったり、
思慮深さ、全体を見通してペース配分していくような
きめ細やかさが不足しているように思います。
そういった部分は、ぜひどなたかにサポート
していただかないと、経営が成り立っていきません。

さて、こんなふうな私ではありますが、
古本 海ねこを始めて今、
いちばん楽しみに感じているのは、
お客様や、海ねこを支えてくださる皆様、
よそのHPの運営者、よそのオンライン古本屋さん、
などとのメールの交換です。
開店してみるまで、これほど
さまざまな方々とやりとりができるとは思いませんでした。
もっと孤独な仕事かと思っておりました。
ところが、孤独は孤独に違いありませんが、
メールのやりとりによって、
初めて接する方となかなかいい交流ができるのですね。
ベッタリする関係より、
この距離感がまた心地いいと感じています。

2日の夜、メールをくださった方は、
ただいまオンライン古本屋を準備中。
イージーシークにすでに本を出品して、
売ってきているお方。
当店のHPをのぞいた印象を書いてくださいました。
そして、こんなことも。以下、
ご本人に許可をいただけましたので、引用します。

「かく言う私も、ご多分に漏れず
オンライン古書店を開店しようと
準備中の仮店主でございます。
日記を読ませて頂いて、自分が感じている不安や
とまどいをそのまま代筆していただいているようで、
読みながら何箇所も大きく頷きながらため息をついたり、
ああここにも頑張ってらっしゃる方が!
と なんだか嬉しくなったり....。
そんなこんなで思わずメールを差し上げてしまいました。」

しかし、こんなことを書いてくださりながら、
イージーシークを見せていただいたら、びっくり。
すでに出品数が500冊に届こうとする勢い。
結構、売れているようでした。
おいおい、あなた、すごいですよ、
海ねこなど小規模すぎてスケールが違いますよ、
すいません…って感じです。

今日いただいたメールの一部を
引用させていただきます。

「うちのは大体がブックオフでのせどりで
100円均一棚から選んだものなんです。
4月始めからコツコツと仕入れて今の数になりました。
でももうちょっと....売れて欲しいですね〜....。
やはり品揃え数は大切のようですね。
ある程度売上をあげるには最低1000冊は必要だそうです。

毎日のように他のお店のサイトをのぞいてます。
.....(中略)とかが主な巡回店でしょうか。(中略)
皆さん独自の個性を打ち出してらっしゃいますよね。
みんな最初から売れてたのかなあ...。

加藤さんの感じてらっしゃる不安、痛いほど良くわかります。
自分もまだまだ暗中模索状態です。
でも、いい本を求める気持ち(売れる本も欲しいけど)を
強く持っていればなんとかなってゆくのではと思ってます。
今はコツコツと本を増やす時期です、そう思って
お互い仕入れ、精を出しましょうね。」

ああ、励ましていただきました。
おまけに、梱包材を安く買えるオークションまで
教えていただきました。
4月からの3か月で500冊近く仕入れるとは!
しっかり者の出来る後輩に
肩を叩かれて「先輩、頑張ってくださいよ!」と
叱咤激励してもらったような…。
私が励ますまでもなく、この人は頑張っていくことでしょう。
ありがとうございました。
書店名を出していいのかどうか、わからないので、
今は伏せておきますね。
近々、オープンのあかつきには、
またご紹介する機会もあるかもと思います。

実は、先輩オンライン古本屋さんからも
3日、ありがたいメールをいただきました。
うみねこ日記を読んで、自分も店を始めたころ、
いろいろ悩んでいたのを思い出しますといった内容。

梱包のことで悩んで何度も包み直してみたり、
一度、梱包したものをわざといろいろな破き方をしてみたり、
床に落としてみたりして、本にダメージがないかどうか
確かめてみたそうです。
本の状態にクレームがついたらどうしようかと
いろいろ気になさって、夜中に古本の夢を見て
目が覚めるほど、神経質になっていた時期もあったとか。

徐々にご自分なりのやりかたを習得なさって、
おもしろがるすべを見つけながら
お店を続けていらっしゃるそうです。

このメールを読んだとき、プロ意識を感じ、
思わず目頭がジーンときてしまいました。

先輩がオンライン古本屋を続けていく上での
迷い、悩み、覚悟、決意、発見、喜び…
そういったさまざまな感情が行間から感じられ、
1日1日、きちんきちんと積んできた重みが
伝わってきたように思いました。

私あての私信として読ませていただきましたので、
店名を出すことは避けます。

さまざまな方々とのやりとりは、
私にとって、海ねこを続けていくための
必要不可欠な栄養分です。
どうもありがとうございます。

2003年7月3日 記


疲れも吹き飛ぶ 魅惑の書店

ちょっと疲れぎみです。
私にしては早起きして、
寝不足のまま取材に出ていました。
取材のたびに、終わってから、
ああ、もっとこういうことも聞けばよかった、
ああいう言い方をしたほうがよかったのでは
ないかと思うのは、相変わらずです。

今日の楽しみは、電車の中での読書。
銀色夏生さんの「つれづれ日記」最新刊。
銀色さんが書いているように、
自分の世界に邁進し、とことん追及
していく強さを私も持ちたいです。
私は、周囲から見れば些細なことでしょうけど、
すぐに、くよくよしてしまいます。
銀色さんの日記を読むと、
落ち込んだり立ち直ったりの繰り返しなのは、
誰でも一緒なんだ、人間ってやつは…とも思います。
そういう部分もひっくるめて素直に
日記に書いている銀色さん。
自身の変わりゆく心を興味深く眺めている
スタンスに、共感を覚えます。

さて、取材でへこんだのを取り戻すべく、
気分転換に書店めぐりへ繰り出しました。
ようやく、遅ればせながら、
六本木ヒルズのヴィレッジヴァンガードへ。

ヴィレッジヴァンガードは、
おなじみ、雑貨のある書店。
ネームカードにはこんな文字
“EXCITING BOOK STORE”
BOOKS,COMICS,MAGAZINES,CDs,POSTERS,
CARDS,TOYS,and more! 
私は何年か前、取材のため訪れた名古屋(? うろ覚え)で
入ったのが、ヴィレッジ・ヴァンガード初体験でした。
当時は知名度も今ほど高くなく、
私はなんの先入観もなく、お店に足を踏み入れました。
アメリカントイのような雑貨の向こうには本の棚。
“うわ、この店は何? 何これ?
おもちゃ屋さん? 雑貨屋さん?
でも、本もあるし、本屋さん?”と驚嘆しました。
本の品揃えを見ると、普通の書店と一味違うのです。
もっとパーソナルな部分にぐいぐい入り込んでくる
印象で、うわ、自分の好みだ、と、ますます驚きました。
その後、吉祥寺店などのぞくたびに、
雑貨と本のラインナップがおもしろく、
このお店はなんて魅力的なんだろうと感じ入るばかり。
あれよあれよという間に店舗数はうなぎのぼりの
一途をたどり、ついに六本木ヒルズに進出。

六本木ヒルズのヴィレッジヴァンガードは、
店舗面積が広大です。それだけに、このお店ならではの
カラーがぐっと色濃くパワフルに漂っていると思いました。

入り口のほうには雑貨が多く、
“なんか、おもしろいものないかな”と、
気軽に足を踏み入れやすいです。
そういえば、ソニープラザに入る気分に似ています。
入り口間際に雑貨をあれこれ積んでいるので、
書店ならではの敷居の高さ、
高い段に構えた感じを緩和している印象でした。

BGMは、ジャズにのせてのびのび歌うBjork
(Bjorkの中でも、個人的に大好きな盤)、
レゲェビートのビートルズ・カヴァー、
スタンダードなジャズなど。
気持ちよく、落ち着いて店内をゆっくり
散策して過ごすことができます。

さまざまなコーナーをあちこちにしつらえ、
本には印象的なPOPが添えてあります。
そして、厳選したラインナップの本を
雑貨もまじえて、うまくディスプレイ。
沖縄本コーナーには、本と一緒に
“すっぱまん”といった沖縄の菓子、
インスタントの沖縄そばなどが売られています。
書店と雑貨屋、駄菓子屋がドッキングしたかのよう。
「島へ。こんなくだらない街をぬけだして」
というコーナーには、南の島もの、島めぐりの本など、
気楽に読めそうな本とあわせて、
『漂着の贈り物』『漂着物入門』といった専門書も。
専門書なのに、とてもおもしろそうに感じ、
思わず手にとって中身を見てしまいます。
廃墟本コーナーには、廃墟の写真集や
廃墟を特集したムックなど。ううーむ、よいよい。

ヴィレッジヴァンガードを設立した
菊池敬一さんの著書『ヴィレッジ・ヴァン
ガードで休日を』を読みました。(当店で品切れ中)
それで、菊池さんがベストセラーに頼らずに
独自のラインナップに力を注いできたこと、
本に添えるPOPにとことんこだわってきた ことを知りました。

実際にお店に行くと、
本の並びやディスプレイ、コピーを
眺めていくだけでも、ワクワクします。
ちなみに『空の名前』(当店でも販売)
のPOPは、以下のとおりでした。
「やっぱりコレ。
初版が出てから10年以上経つけど、
一番楽しい空の本はコレ。
晴れてる日はいつもこの本を思い出す。」
『ぼくを探しに』(当店でも販売)のPOPは
「完ペキな人間より
ちょっと欠点がある奴の方がステキだ。」
『ビョークが行く』は
「生まれてくれてありがとう。」

お店ならではのテイストで厳選した本を
おもしろみのある雑貨たちと一緒に置くことによって、
本がイキイキと楽しそうに見えます。
同じ本でも、あのお店に並んでいると、
とってもおもしろそう。
自分が今まで一度も手にとったことがない本でも、
ついつい手にして中をのぞきたくなります。
引き付けられます。

どんなに資本力があって、
同じだけの店舗面積があり、
同じだけの仕入れのための資金があったとしても、
魅力的な書店を作れるとは限りません。
「すげえ!」と心の中で叫びつつ、
おのぼりさんふうにウロついてきました。
古本を入れるのにちょうどいいので、
折りたたみコンテナボックスその他、買いました。

いい部分はどんどん参考にしたい。
同じ本でも、並べ方、見せ方、
添える文章、周囲のフンイキいかんで
ぜんぜん違ったものに見えるのだと改めて思い知りました。

おかげでだいぶ元気になってきました。
本の売れ行きはよくないですが、
オンライン古本屋は長期的に展開していくのが
よさそうなので、じっくりいきます。
今日も、何通か印象的なメールをいただきました。
どうもありがとうございます。
皆さん、お元気でしょうか。
私は元気がない日もありますが、
きっとまた元気になれそうな気がします。

ねこのクッキーが、パソコンのキーボードに
腕(前足を)を伸ばして眠っています。
新着本の更新がまたカメの歩みですが、
少しずつ増やしていきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

2003年7月7日 記


頑張ってらっしゃる他店を横目に…

メールのやりとりを通じて知り合った
オンライン古本屋「萬吉書林」が
14日深夜12時にオープンしました。
萬吉書林さん、開店おめでとうございます。
店主は、滋賀の武呂さん。
リンクしてありますので、
ご興味のある方はのぞいてみてください。
武呂さん、宣伝のついでに、
あかしてしまいますがいいでしょうか?
武呂さんは、いつかこの日記でご紹介した
メールのやりとりのお相手です。
ご記憶にある方がいらっしゃいましたら、
「うみねこ日記」から「記憶力がいいで賞」
を差し上げましょう(ウソです)。
4月からわずか3か月間で400冊以上も
集めたというファイトマンです。
エンターテイメント全般をカバーしようという
志の高さ&守備範囲・教養の広さ。すごいですよね。
やはり、ある程度の知識なしには
仕入れも満足にできませんから、これほど
広い分野の本を選り抜いて用意できるとは感服いたします。

オープン前に、うみねこ日記を読んで
メールをいただいたのがやりとりの始まり。
以後、いくつか質問を受けて、
わからないなりにどうにかお答えしました。
少しはお役に立てたのでしょうかね???
お答えしながら、むしろ私のほうがいろいろ
考えるきっかけをいただきました。ありがとうございます。

彼のやり方を見ていると、やる気まんまん。
あふれんばかりのエネルギーのうち、
こぼれ落ちてきた一滴、二滴、
おこぼれに預かりたいような気持ちになります。

“私はライターとしての仕事もあるし、
家事もあるし、ネコ5匹の世話もあるし、
古本屋業だけに専念できないから”と
思ってみても、しょせんは言い訳。
北尾トロさんのメルマガを読めば、
トロさんは原稿も精力的にどんどん書きつつ、
おもしろそうな本を仕入れて、どんどん売っています。
うさぎ書林さんの日記を読んでも、
セドリのため、都内ブックオフをはしごして、
どんどんよさそうな本を仕入れています。
皆さん、本当に頑張ってらっしゃいます。

刺激になります。
しかし、正直に言いますと、
一方で、めげそうになることもあります。
私は、一体、なんでこんななのだろう?
生来なまけ者の自分がすぐに、
首をもたげやがるのです。
“こんなに頑張っている人がいるなら、
私なんかが頑張る必要もないかしら”
なんて、のほほん、ぼーっとしてしまうのが困りもの。
いや、でも、私の好きなミュージシャンも
ちょっと似たフンイキのことを言ってたなと思い出しました。
彼は長いツアーを終えたあと、
しばらく休暇をとっていました。
そのころの話をインタビュー記事で読むと、
“世の中にはいっぱいいい音楽があって、
いい詞や曲を作る人が大勢いて、
自分、曲作りとかせんでもいいんとちゃう?(苦笑)”
と、あやうく思いそうになったとか。
しかし、休み続けているうちに、
周囲からぼちぼち曲作りしてレコーディングしなさいと
葉っぱをかけられて腰をあげたそうです。

世の中にこんなにオンライン古本屋が
たくさんあって、
しかも、それぞれに特色を打ち出して努力なさっていて、
常連客もついていて、売り上げも上がっていて。
海ねこは売れ行きもポツリポツリだし、
一体どうやっていけばいいんだろう、
ほかのところが頑張ってるし、
もうええんちゃう? と、
こっそり寝たふりしたくもなります。
が、いかんいかん。
寝たふりしてるどころじゃなかった。
頑張っている人を見て、よし、自分も
頑張らねばと思うべきところでした。

こんなしょうもない私が店主ですが、
まだまだ寝たふりせずに、
こつこつと本を増やしてまいります。
小規模、地味ではありますが、
“お、いい本あるじゃん。この値段なら
買ってみるかなー”と思っていただけるように
品ぞろえしていきたいと思います。
よろしかったら、またのぞいてください。
そして、好きそうな本が見つかったら
オーダーなさってください。
喜んでお届けいたします!
どうぞよろしくお願い申し上げます。

●追記
今さっき、他店の日記を読んで、
仕入れ冊数、売り上げを垣間見ました。
やはり、他店は500冊〜規模なのですね。
当店はいまだに200冊強。
始めたころは、もっと少なかったです。
よくぞ、この冊数で始めたものです、われながら。
今、イージーシークに出品中が209冊。
当店直、イージーシーク、アマゾンで売れたのは、
厳密にはわかりませんが73冊+α。推定100冊ぐらい?
在庫を抱える恐怖はありますが、
少数精鋭でやっていけるカラーではありません。
自分が好きな本は、もっと自信を持って
どんどん仕入れていこうと思います!
家族よ、許しておくんなさいまし〜。
すでにもう“古本山”にかなり驚かれております。

●追記の追記 7月15日
売れた冊数を確認してみました。
アマゾンマーケットプレイスで3月末から58冊。
イージーシークで5月から39冊。
当店直は、まだまだ少なくて20冊ほど。
トータルで売れたのは、現在117冊です(キャンセル3冊?)。
お買い上げくださった方に感謝します。
117冊、発送・梱包してきたかと思うと、
ちょっぴりしみじみ&やる気が出ます。
イージーシークに登録中の出品数は207冊です。
まだまだこれから。頑張んべー。

2003年7月14日 記


愛があるかどうか

東京は先ほどまで雨。
ようやく日がさしてきて、西日が照りつけ始めました。
今年の梅雨は長いですね。

もうちょっとで今月の仕事が落ち着きそうです。
月刊誌の仕事をしているので、
毎月、半ばあたりは多忙です。

時間ができたら神保町に通いたいです。
学生時代、大学の近くでしたので、
神保町の古書街へは、卒論の資料集めなどに、
ときどき足を運びました。
しかし、神保町は神保町でも
大学からほど近い側にある居酒屋で、
サークル仲間と飲んだくれていた
時間のほうが長かったような…。
各種バイトも忙しかったです。
練習がある日は、今は亡き記念館で夜まで楽器演奏して、
合間に、いもや、ほか定食屋で食事。
練習後は居酒屋、というパターンで
日々を過ごしていました。

ああ、私の青春時代、なんでもっと
神保町の古本屋通いしておかなかったのか。
そうも思いますが、仲間と飲んだのも、
またよき思い出ですよね。
大学の授業よりも、 友達と喫茶店でうだうだしゃべったり、
サークル仲間と居酒屋でわいわいやって
いた記憶のほうが強く残っています。

というわけで、神保町に通いたいとは思うのです。
しかし、ついつい買い込んでしまう性癖を思うと、
やはり地元の古本屋さんを車で回るのも捨てがたい。
ちょっと足を伸ばせば、なかなかいい店が多い
地域なので、ありがたいです。
ブックオフもやはり魅力。
先日は、贔屓の雑誌『トーキンロック!』
11号・17号を見つけて購入しました。

贔屓にしているミュージシャンのページ中心に
読んでいるので、その限りで言うと、
なにしろインタビューがいい。

音楽誌にありがちな「……論」ふうのノリの記事は、
個人的にあまり好きではありません。
がちがちにイメージでからめとって、
すごく狭い一断面を無理やり切り取って
決め付けたような記事に、
おもしろみを感じません。
たとえば「孤高のロッカー」と決め付けたところで、
その人だって、 いろいろな側面を持っていますよね。
最初からタイトルが「孤高のロッカー」と決まっていたとしても、
最初から最後まで、その方向へと無理やり
誘導尋問するようなインタビューは好きではありません。
むしろ、孤高のロッカーのはずの人なのに、
ふっと話題にのってきて自由に語り始めたときにこそ、
おもしろい話題も出てくると思う。
ぽろっとこぼした弱音・ため息が
心に響くときだってあります。
こういう面もあれば、ああいう面もある、
というのが人だと思う。
こうしたいと思ったり、いやしかし、と迷ったり、
揺れ動き、日々刻々と移り変わっていくでしょう。
ふっと口にした言葉がおもしろかったら、
話の流れで好きなように話してもらったほうが、
インタビューとしておもしろくなるときもあります。
時間があるなら、そこからまた元のテーマに
話を戻していけばいいでしょう。

まあ、ケースバイケースで、
「……論」ふうに独断と偏見で書いたほうが
おもしろく読める記事になる場合もあります。
誌面の都合や雑誌のカラーもありますので、
「……論」ふうに書かないといけないときもあるでしょう。
話し手、書き手ともに、いろいろな人がいて、
いろいろな考え、いろいろな制約があります。
語るは易し、行なうは難し。
取材は難しいですよね。偉そうなことなど言えないや。

ただ、私個人の好みとして言えば、
トーキンロック!の吉川尚宏さん(編集長、だと思います)
方式のインタビューを支持したいということです。
人間くささが出るインタビューのほうが
個人的におもしろみを感じるのです。

私は、もう10年以上、取材し続けている
アイドルグループがいます。
雑誌が長続きし、タレントの人気が衰えず、
ライターとしての自分も続いてきたからこそ、
どうにか続けてこられました。
同じ人物を長年、取材し続けるのは、
以前からやりたかったこと。
実際に続けるとなると、お互い慣れや甘え(あきらめ?)も
出てくるし、大変な面もあります。
しかし、飽きることはありません。
毎月毎月、話を聞き続けていても、
どんどん知らなかった面が出てきます。
その中の一メンバーにあるとき
「自分はこうこうだって、
ひとつの色で決め付けられるのは
好きじゃない」と
言われたことがあります。
確かに、身近にいるひとりの人でさえ
理解するのは易しくないのに、
あの人はこう、この人はこう、と、
安直なイメージのみで簡単に取材対象を
断定してしまってよいのかどうか?
その点、吉川さんはなにげない雑談を繰り広げて、
そこから浮かび上がってくる人となりを
自然に綴っています。
あとは、読み手が自由に解釈してーな、
というノリのように思う。
このスタンスが好きです。

吉川さんの文章には、ミュージシャンへ
のインタビュアーの愛が感じられます。
足しげく、あちこちのツアーに通っていますし、
ミュージシャンのためにライブで使う早口言葉を
毎号、必死に考案してくるという力の入れようです。
私がこの仕事を始めたとき、
何度も原稿の書き直しをさせられました。
「愛がないんだよ」と怒鳴られたことがあります。
書いていたら、そんなことまで思い出しました。

おっと、私は書き出すと、
どこまででも話がずれていきます。
すみません。戻します。

そうそう、近くの古本屋の話でした。

昨日、花火大会の前に、たまたま
調布駅近くのビルのわきを通ったら、
古本屋があるのに気づきました。
その名前の古本屋が調布にあることは知っていましたが、
場所までつかめずにいたのです。
連れ合いがいたので、さーっと眺めただけですが、
いい本をそろえていましたね。
状態もよさそうでした。
ただし、値段はちょっと高めかな。
今日また、映画のレイトショーを観る前に
立ち寄ってみようと思います。

長々と読んでいただき、ありがとうございます。
もう一話題だけで終わらせます。
検索エンジンについて。
グーグルやヤフージャパンで「古本 海ねこ」と入れて
検索していただくと、当店サイトが出てきます。
できることならヤフーに「オンライン古本屋」として登録したくて、
先ほど、カテゴリーの工夫など、
あれこれやってみました。
果たして、審査で通るかどうか?
ちょっと頑張ってみてダメそうなら、
年間5万円(+消費税)払って有料でのせていただくか。
思案のしどころであります…。

2003年7月21日 記


ライブ、そして、オンライン古本屋

フジロックフェスティバルが25-27日、
苗場で行われました。
私は26日のみ参加。
前夜から越後湯沢入りしましたが、どしゃ降り!
26日の当日も、まだ雨が降っていました。

会場はスキー場のような山道。
広大な敷地に点在するステージからステージへと
渡り歩いて、好みのミュージシャンのライブを見ます。
行く前、会場はどろどろのぬかるみ、
沼状態との情報を得ました。
しかも、朝はまだ雨。
行くのが億劫で、風呂にでもつかってようかって気分でした。
アウトドア用のカッパ上下とゴアテックスの靴を持参しましたが、
友人の薦めで長靴(大正解でした)を買い込んで行きました。

行ってみたら、とても居心地のいいフェスティバルでした。

電撃ネットワークとファンの熱気にまきこまれ、
自分もいつの間にか、とんでもなく元気になっていました。

山崎まさよしのナマ音、ナマ声、ナマ姿、ナマふるまいに
心を揺さぶられました。
3万人の大観衆を前にしても、ふらふら〜っと出てきて
、部屋でギターでも弾くように自然に弾き始めました。
古い曲を中心に、アレンジに工夫をこらしてありました。
いたって自然にのびのび歌って弾いて、
ぺこんとお辞儀して帽子をかぶって、
ひょろひょろ〜っと立ち去っていきました。

BAHOは、くつろいで歌い演奏するチャーら。
こちらも心底くつろいで、楽しむことができました。

ベン・ハーパーは、思った以上に飾り気なく、
思った以上にハードなギターを鳴らしていました。

ビョークは、3万人収容の大ステージの後ろのほうで
観たので、本人は豆粒大。
姿形は、スクリーンにうつるのを見る程度でした。
それでも、彼女の声がひとりひとりの心に
ずんずん届いて、どんどん入り込んでくる。
すさまじい迫力でした。
生きざまそのものをライブで表現してしまう天才
(にじみ出てしまうサガ、というか)。

どんなに録音・再生の技術が進歩しても、
やはり、ナマで歌う・観る・聴く魅力は段違いです。
まったく別ものといえるでしょう。

フェスティバルそのものの空気感もバツグン。
主催者側のフェティバルにかける気持ちが
会場のすみずみにいきわたっていて、
しかも、押し付けがましくなく、自由に過ごせる感じ。
大変、居心地がよかったです。
あの会場にいる人々は、雨・ぬかるみ・ドロだらけで
だれもが疲れていました。
座る場所がほとんどないので、ドロの上に敷いた
ビニールシートに腰かけてうとうとする人々。
なのに、みんな、表情がやわらかく、
思い思いに楽しそうに過ごしていました。
トイレ待ちの行列に並んでいても、
だれも文句など言わず、むしろ譲り合い。
日本人もまだまだ捨てたもんじゃないぜ。
リピーターが多い理由が、行ってみてわかりました。
アジアンフード系のメシがうまい。
出演ミュージシャンも心地よさそう。
システムがとてもよく整えられています。
1日1万4500円の価値は十分あると思えます。
グッド・サービス、グッド・クオリティの見本でした。

27日は帰るだけでしたが、
越後湯沢の空は、青く澄み渡り、
きれいな夏空でした。

いつも長くなってしまので、今日こそ短く
まとめようと思いましたが、あやしくなってきました。

さて、オンライン古本屋を始めてみたい、
という方からメールをいただきました。
ときどき、そういったメールをいただきます。
当方の日記を読んで、自分もやれるかも、やってみたいと
お感じになって、メールをくださるようです。
うれしいです。
さっそく返事を書きました。ありがとうございました。

今の時点で、
私に言えるのは、以下のようなことでしょうか。

こつこつ、きちんと手順を踏んでいけば、
オンライン古本屋は、たぶん誰でも始められる。

始めるより、長く続けていくほうが
たぶん難しいと思います。

売れる本、売れない本と分かれますので、
どんな本を売るのか、考えたほうがよさそうです。
売れない本ばかり仕入れると、在庫が増える一方です。
しかし、売れないだろうと思った本が売れたりします。
これは売れるだろうと思って仕入れた本が
なかなか動かなかったりもします。
そのあたり経験を積んで、自分で要領を覚えていくしかないでしょう。

それと、どんなカラーを打ち出していくのか、
個性を出すことを考えたほうがよさそうです。
何度もHPをのぞきたくなるように、
そして、本を買おうという気持ちになっていただけるように、
印象づける必要はあると思います。
実際にどうやっていけばいいのかは、
類似店を観察したり、自分の頭で考える必要があるでしょう。

利用者側の気持ちをつねに忘れてはいけないと思います。
自分も本を買うほうがいいです。
いろいろ学びとることができます。

接客業的な要素があります。
いろいろな方とやりとりすることになります。
きちんとすぐ入金してくださり、
こまめにメールをくださって
円滑に取引を進めてくださる方もいます。
しかし、人それぞれですので、
皆さん、そういう方ばかりではありません。
メールという文字上だけでのやりとりですので、
円滑に進めるためには、カン、根気、礼儀、想像力
など、必要なものが多々、出てくるでしょう。

私のような小規模のやり方の場合、
仕入れも少ないですし、売り上げもわずかです。
中には、少ない仕入れで、たくさん売っている
お店もあると思いますが、レア・ケースでは?
毎月15万ー20万円以上、売り上げがあるお店は、
杉並北尾堂、うさぎ書林さんのように
ものすごく努力なさっていると思います。
私は小規模レベルなので想像で言いますが、
お金をかけて、どんどん仕入れて、
どんどん売っていくためには、
売れそうな本を仕入れる能力と行動力、
在庫を置いておくスペース、在庫管理力が必須でしょう。
次々に丁寧に梱包して、きちんきちんと発送して
何があっても対応していける性格も必要でしょう。

私のようにこじんまりとやっていく場合は、
在庫も管理しやすく、在庫を置くスペースは
まあ畳2畳分ほどでもなんとかなります。
それでも、少しずつ仕入れをして、
在庫に変化をつけていかないと、売れ行きは保てないでしょう。
このペースだと、オンライン書店の専業では食べていけません。
それでも、梱包・発送のペースはゆるやかですし、
じっくりと楽しみながらやれます。

本が好き、こまめに対応するのが苦じゃない、
人とやりとりするのが嫌いじゃない、
あれこれ創意工夫するのをおもしろがれる、
そういう人は、おそらく楽しんで続けていける
世界なのではないでしょうか。

私がしたことですが、まずはHPを開設する前に、
手持ちの本をイージーシークや
アマゾンマーケットプレイスに出品なさるといいでしょう。
どんな本が売れて、どんな本が売れないか、
どんな方が買ってくださるのか、
どんなふうにやりとりして、
どんなふうに梱包・発送すればいいのか、勉強になります。
1冊から出品できますし、今日からすぐ始められますよ。
やってみて、おもしろく続けていけそうだと感じ、
自分のHPを持ちたいと思ったら、
次のステップをお考えになってみてはいかがでしょう。

…とまた長々と書いてはみたのですが、
始めて間もない自分が語るのはおこがましく、
穴に入りたい気分になってきました。
一度、書いたあと、アップするのはやめようかと思いましたが、
書いていて自分で気づく面も多く、
なんらかのご参考になれば、と読んでいただくことにしました。
偉そうに何を言うかとお感じかもしれませんが、
初心者ならではの感じかた、
初心者なりの見解ということで、お許しください。
こんな図々しいアホ店主もおります。
「これは違う」とお感じの部分など、
ぜひメールをくださいませ。

2003年7月28日 記


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