古本 海ねこ トップページへ戻る

ロシアの絵本・美術書


ユーリー・ノルシテインの世界ロシア絵本TODAY
広告ポスター、マトリョーシカほかアートと絵本の周辺
50年代ー80年代の古書
90年代以降の絵本 その1その2その3その4その5その他チェブラーシカ
イワン・ビリービン
80年代の絵本 日本語版・80年代以降の絵本 日本語版・80年代以降の絵本 日本語版 続き
日本語版 古本



こちらで紹介した新読書社の本は、いずれも新刊です。
新刊ですが、長年、倉庫にしまいこまれていた貴重な本もあり、搬送中・保管中についたイタミが多少ある場合があります。
とくに、旧ソ連(USSR 懐かしい響き!)で印刷・制作された本は、つくりが粗い部分もあります。
それはそれで素朴な味といいますか、独特の味わいとお考えいただけたらと思います。

なお、本によっては発送まで少々お時間をいただくことがありますので、ご了承ください。





coverコマンドルの島じま ミトゥーリチ 絵と文 伊集院隆介・訳
新読書社 92年・初 1200円

文字が多めの絵本。文字の見開き、そのあと広がる絵いっぱいの見開き。

コマンドル諸島には、もうひとつは、「銅の島」といって、高くけわしい島がある。
きりにつつまれ高く切りたった岩はだ。
「銅の島へ行かずに、コマンドル諸島に行ったとは言えない」と言われるのもむりはない。
銅の島に住む人たちは、ベーリング島より少ないが、けものや鳥たちはずっと多い。
ここには、もっとめずらしい動物ーラッコがいる。(本文 より)

マイ・ミトゥーリチは、1925年、モスクワ生まれ。
父親は絵描き。著名な詩人ベルミル・フレブニコフと仲良しだった彼は、
その妹と結婚。それがミトゥーリチの母親で、やはり絵描きでした。
マイが16歳のとき、ドイツ軍がロシアに攻め込んできました。
彼も対戦車ごうを掘る仕事につき、やがて志願兵になって戦場へ。
絵の才能が認められていたため、当時から有名だった画家のラチョフ、
ポポフらとともに兵士たちの顔や姿を描く仕事をさせてもらいました。
戦争が始まった1941年、母親が亡くなります。
戦後、マイはベルリンにいました。
戦後入学した美術学校を1953年に卒業。3年後、交通事故にあい、両足を大ケガ。
マイは父親もなくし、若い仲間たちと絵本画家の道を切り開き、マルシャーク、チュコフスキーら作家の挿し絵を描くように。
自然、とくに動物や木々を愛する彼は、シベリアの森からカムチャッカ半島、
クリール列島の南はじまで、大自然や動物を見てまわり、写生を続けます。

表紙に描かれているエトピリカという鳥は、絶滅に瀕している鳥。
エトとは「くちばし」、ピリカは「かわいい」というアイヌ語からできた名前とのこと。
ベーリング船長がシベリアとアラスカの間のベーリング海峡を通って、このベーリング島で亡くなったのは1741年。
「おろしゃ国酔夢譚」の大黒屋光太夫がカムチャッカ半島に流れ着く50年ぐらい前のお話です。

読みごたえ、見ごたえ充分な1冊です。

ハードカバー サイズ 天地 26.4センチ×左右 18.2センチ



coverおしゃべりはえの子 ぶんぶんこちゃん
コルネイ・チュコフスキー作 ミトゥーリチ・絵 佐伯靖子・訳

新読書社 92年・初 1200円

ロシアでは、男の子も女の子もみんな、チュコフスキーのすばらしいお話をいくつも空でおぼえています。
…わたしも子どもの時からチュコフスキーのお話がすきで、大きくなって絵かきになり、
たくさんの彼の本のために絵をかきました。
…「おしゃべりはえの子 ぶんぶん子ちゃん」のために絵をかいた時、気のいい、
おちょうしもののハエのおしゃべりぶんぶん子ちゃんが、かわいそうになり、
彼女を殺そうとしたわるいクモが、にくらしくなりました。
そして、ちいさいけれど勇気のあるカが、わるいクモにかかって、
ハエのぶんぶん子ちゃんをたすけた時、わたしは、みんなと同じように、気分がよくなりました。
…ロシアの子どもたちは、これは、いちばん大すきなお話だからです。(ミトゥーリチ あとがきより)

ロシアの教科書にのっていて子どもたちに親しまれている作品です。

ハードカバー サイズ 天地 26.5センチ×左右 18.7センチ



coverおんどりコッコちゃん ふゆの一日
マイ・ミトゥーリチ絵 ライサ・クダショワ作 吉田知子・訳

新読書社 2002年・初 1200円

小川のほとりの小屋に、雄鶏のコッコちゃんが姉さんと住んでいました。
冬が訪れ、あたり一面、銀世界です。小川もかちかちに凍りました。
ひとすべりするぞとワクワクのコッコちゃんでしたが、姉さんに止められてしまいます。
姉さんの誕生日、ピロシキを焼いてごちそうづくりで大忙しの姉さん。
そのすきにコッコちゃんはこっそり小川へ向かってまっしぐら。
氷の上に足を踏み出したとたん氷が割れて落ちて大変な目にあいます。
しかし、ベッドで寝込んでいたはずのコッコちゃん。
誕生日パーティーでお客さんが席についたとたん、
ごちそうがなくならないか心配になって、ふっとんできて、みんな大笑い。
シンプルで素朴な絵柄でいながら、表情豊かな鳥たち。鳥1羽1羽の気持ちが伝わってくるようです。

マイ・ミトゥーリチは、「美女と野獣」の原作のひとつと言われる
「赤い花と美しい娘と怪獣の物語」(2000年、新読書社)でも親しまれています。
両親が画家ということもあり、立派な画家になろうと張り詰めていた気持ちが画風に出ていたのかもしれませんが、
若いころは「コマンドルの島じま」(92年、新読書社)など重く暗い絵を描いていました。
旧ソ連時代、そして、ロシアになってからも国家勲章を受章しています。

ライサ・アダモヴナ・クダショワ(1878年〜1964年)は、モスクワ生まれ。
長年に渡り図書館司書とつとめながら、子どもたちのための詩を書きました。
1903年に発表した詩「森でちっちゃいもみの木が生まれたよ」は
誕生して100年たった今も子どもたちに歌い継がれています。

ハードカバー 天地 21.8センチ×左右 15.5センチ



cover品切れ おふろおばけ
チュコフスキー メフコーワ・絵 ばばともこ・訳

新読書社 82年・初 500円

もうふがぼくからにげだした。
シーツは、そらにまいあがり、まくらもぼくからにげだした、
かえるみたいにとんでった。

すばらしくトンデいるお話と絵、訳文。
子どもに生活概念を受け付けようとする大人たちの思惑があるとしても、これですから。

「そこへ せんめんだいのおやぶんさん、
えらいえらい おふろおばけ
せんめんだいの しれいかん
たわしたちの たいちょうが
おどりながら やってきて、
ぼくにキスして こういった。
おれは きみが だいすきだ」

動物とお話ができるドクトル・アイボリー シリーズでおなじみ。
当店でも扱っている「ちいさなひよこ」も、この作家によるもの。
新読書社、プログレス出版(モスクワ)の共同出版。
背に文字はありません。扉はなく、表紙のすぐ裏(表2)から絵と物語がスタートします。無駄なし。

ハードカバー サイズ 天地 29センチ×左右 22.6センチ



coverはじめてのどうぶつえほん
エブゲーニィ・チャルーシン・文 ニキータ・チャルーシン・絵 佐伯靖子・訳

新読書社 91年 1200円 表紙ほか、少イタミ・ヨゴレ ヒモをかけてあったあと凹み

「あつい国とさむい国のどうぶつ」「森のなかで」「家畜たち」の3編。

エフゲーニィ・チャルーシン(1901年〜1965年)は
動物と自然を愛した画家であり、児童文学者としてロシアで愛されています。
この本は、その彼が描いた文に、息子であり、
やはり有名な動物画家であるニキータ・チャルーシン(1934年〜)が絵を描いたもの。
父親譲りの豊かな画才が、みごとに発揮されています。
ざらっとした感じの、わずかにクリーム色がかった紙に動物たちが豊かなタッチで描かれています。
大人の鑑賞に充分耐える質の高さ。ぜひどうぞ。
運がよければビニールカバーつきをお送りします。お早めに。

製本・印刷 ラドガ出版(モスクワ)
新読書社とラードガ出版所によって、日ソ共同出版として発行されました。

ハードカバー 厚さ1センチほど。サイズ 天地 28.5センチ×左右 20.8センチ



coverわんぱくすずめのチック
ビアンキ・作 チャルーシン・絵 おちあいかこ あさひみちこ・訳

新読書社 91年 500円 表紙ほか、少イタミ・ヨゴレ

チックは、頭の赤い若ものすずめ。
ひとつになった誕生日に、彼女のチリカと結婚して一緒に暮らすことになります。
「チックさん、どこに巣をつくりましょうか。木の穴は、みんなふさがっているのよ」と言われて
「そんなら、隣のやつを追い出して、穴をとってやるさ」とチック。
ケンカが好きで、自分の勇敢なところを奥さんに見せたくてなりませんでした…。
ねこがかなり目立つ役割で登場します。ただし、主人公はすずめですので、悪役(笑)。

チャルーシンは動物を描いては最高と言われる人。
卓越した観察眼とデッサン力…。力強さとあたたかみ。
「幻のロシア絵本1920-30年代」展に行った人は、
彼が描く動物の躍動感に圧倒されたことと思います。

チャルーシンはビアンキとよくコンビを組みました。
ヴィターリー・ビアンキ(1894年〜1959年)は、ロシアの子どもたちがよく読んでいる動物文学者。
子どものころから動物に親しみ、大学で自然科学を学びました。
1924年に「森の小家」を処女出版。多数の作品があります。
野生の鳥や動物を描いた絵本や物語を通して、動物や自然を扱った児童文学というジャンルを確立しました。

新読書社とモスクワのラードガ出版所の共同出版。
Made in USSR の文字が入っています。

ハードカバー サイズ 天地 29.1センチ×左右 22.5センチ



cover品切れ 子ねこのチュッパが、とりをねらわないわけ
チャルーシン 文と絵 松谷さやか訳

新読書社 81年・初 400円 表紙ほか、少イタミ・ヨゴレ

背表紙に文字はありません。
扉をあけると、左ページに植物と蝶の絵柄ーこれもすばらしい。
扉はなくて、右ページからもう「こねこのチュッパ」のお話が始まります。
チュッパは驚いたり、おもしろいものやフシギなものに気づくと、くちびるを
ぴくぴくさせて「チュプ、チュプ、チュプ、チュプ」といいます。
それて「チュッパ」と呼ばれるようになりました。
小鳥を見つけてそっと近づいていくときばかりは、もうチュプとはいいません。
だけど、小鳥をつかまえられるかというと、まだまだ。ぶきっちょな子ねこなのです。
「こねこのチュッパ」「あかちゃんにされたチュッパ」「チュッパがとりをねらわないわけ」の3篇。
ねこの毛の感じがフワフワふかふか、温かみを持って描かれています。

新読書社とプログレス出版(モスクワ)の共同出版として発行された<ソビエトの子どもの本>シリーズの1冊です。
Printed in USSR の文字が裏表紙に入っています。

ハードカバー 14ページ。サイズ 天地 25.6センチ×左右 21センチ



cover品切れ  どうぶつのこどもたち
新読書社 85年 1000円

マルシャーク文 チャルーシン絵 かばさわたかこ訳「どうぶつえん」
アグニヤバルトー作 ステーエフ絵 ばばともこ訳「あばれんぼうのこぐまちゃん」
ラープチェフ文と絵 福井研介 訳「いっち、に、さん…」の3篇。

「どうぶつえん」は、岩波の子どもの本(1954年、昭和29年)の「どうぶつのこどもたち」と
一部、重複した絵が見られます。
私は「岩波の子どもの本」元版が好きですが、昭和41年版と昭和50年版を見て比較した限りにおいて、
印刷は新読書社版のほうに軍配。あたたかみのある色がきれいに出ています。

マルシャークといえば、日本でもよく知られているサムイル(サムエル)・マルシャーク(1887〜1964)。
帝政時代のロシアで、貧しい労働者の家に生まれました。
ユダヤ系として迫害を受けつつも、早くから文才を認められ、ゴーリキイの援助を受けました。
ロシア民話の豊かな伝統を受け継ぎながら、新時代の到来をうたった詩を意欲的に書きました。
1917年の革命後、革命の熱気と夢を胸に抱き、理想的な
国家の創造を夢見る芸術家たちによって、すばらしい絵本がたくさん産み出されました。
マルシャークは、ウラジミール・レーベジェフの絵とのコンビによって、すばらしい絵本を産み出し、
「絵本革命」の先駆けともなったのです。
1923年「おりのなかのこども」、1946年「森は生きている」ほか、ロシアの児童文学史上、
忘れることができない人です。

ステーエフは、「ニャーンといったのはだーれ」でもおなじみ。
ラープチェフは上で紹介した「どうぶつのちびちゃん」も描いています。
新読書社とラードガ(モスクワ)の共同出版による<ソビエトの子どもの本>シリーズの1冊です。
ぎざぎざ入りのビニールカバーがなつかしいです。
ハードカバー 49ページ。サイズ 天地28.8センチ×左右22.7センチ

ユーリー・ノルシテインの世界ロシア絵本TODAY
広告ポスター、マトリョーシカほかアートと絵本の周辺
ソビエトグラフソヴェート文学50年代ー80年代の古書
90年代以降の絵本 その1その2その3その4その5その他チェブラーシカ
イワン・ビリービン80年代の絵本 日本語版・80年代以降の絵本 日本語版・80年代以降の絵本 日本語版 続き
日本語版 古本



古本 海ねこ トップページへ戻る